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第11話・ヘソディムマニュアルの紹介(8) ~東京農業大学・對馬先生の「ヘソディムの話」
ここからは、2016年に作成されたマニュアルからの紹介です。
なお、2016年のマニュアルには「指導者向けマニュアル」(2013年と同様のマニュアル)と「診断のための技術情報」がセットになっています。後者では、1.菌媒介ウイルスの高度検出・定量法、2.DRC診断のための実用的手法、3.より低コストなPCR-DGGE解析手法が掲載されています。
指導者向けマニュアルでは、第8話ですでに紹介したショウガ根茎腐敗病(高知県)に関して、さらに高知県、長崎県の新マニュアルが紹介されています。
高知県マニュアルは、2013年をさらに発展させていると考えていただけると良いと思います。長崎県については、新たにこの事業でマニュアル作成に取り組みました。長崎県マニュアルは高知県の診断項目と同じで、前作発病度と土壌中の病原菌密度になっていますが、その評価では微妙な違いがあります。また、対策においても高知県は土壌消毒、生育中の防除をレベル毎に指導していますが、長崎県ではそれに種子消毒も加えています。このように県によって、診断項目、対策は異なります。
繰り返しになりますが、ヘソディムでは、「圃場によって発病が異なるので、診断・対策も異なる」ということが前提になっています。興味のある方はぜひ高知県、長崎県のマニュアルを参考にしていただけたらと思います。
今回は、2016年に作成されたマニュアルの中から群馬県のバーティシリウム萎凋病マニュアルを紹介します。
群馬県のバーティシリウム萎凋病マニュアル
病原菌はVerticillium longisporum、Verticillium dahliaeです。
病名のバーティリウムはこの糸状菌の属名から来ています。病気に罹ると黄化して萎れるのが特徴です。
病原菌は土中で生存し、それがキャベツに感染して発病します。そのため、このマニュアルでは『ヘソディムではまず、圃場の診断が重要です。圃場でバーティシリウム萎凋病による黄化・萎凋した株があるかどうか、 地上部の病徴を確認して下さい。』ということを強調しています。
【診断】
群馬県のマニュアルはとてもユニークと言えるかもしれません。それは診断項目がとても単純だからです。
● 圃場の状態(発病しやすさ)の評価
下記の表にしたがって、レベルを3段階に分けています。病原菌密度などの診断項目を使っていません。
このマニュアルの診断項目は一見単純ですが、このマニュアル作成に関わった担当者によると「このマニュアルの目的は『使ってもらうこと』であった。そのため、群馬県ではできるだけ診断項目を省力化した。ただし、それができたのも膨大な現地圃場での試験データや12年に及ぶ全村での発病調査の結果があったからである。これらの結果から、前作の品種と発病株割合さえわかれば、次作で被害を出すか出さないかのおおよその判断ができることが分かった。群馬県マニュアルは、生産者やJAの指導員、県の普及指導員の経験などに基づいたHeSoDIM的な防除指導を形にしたものである。」(群馬県池田氏 私信)とのことでした。
今回はここまで。次回は、引き続き群馬県のバーティシリウム萎凋病マニュアルの【対策】からご紹介します。
■執筆者プロフィール
東京農業大学生命科学部分子微生物学科植物共生微生物学研究室
教授 對馬誠也(つしま せいや)
1978年 北海道大学農学部農業生物学科卒業
1980年 北海道大学大学院修士課程 修了
1995年 博士号授与(北海道大学) 「イネもみ枯細菌病の生態と防除に関する研究」
1980年 農林水産省九州農業試験場病害第一研究室
1991年 農林水産省農業環境技術研究所微生物管理科
1995年 農林水産省東北農業試験場総合研究第3チーム
2000年 農林水産省農業環境技術研究所微生物管理科
2001年 独立行政法人農業環境技術研究所農業環境インベントリーセンター微生物分類研究室室長
2007年 独立行政法人農業環境技術研究所生物生態機能研究領域長
2009年 独立行政法人農業環境技術研究所農業環境インベントリーセンター長(2015年退職)
2015年 非営利活動法人活動法人圃場診断システム推進機構理事長
2017年 東京農業大学生命科学部分子微生物学科植物共生微生物学研究室 教授
現在に至る