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第25話・HeSoDiM-AIの紹介(4)~東京農業大学・對馬先生の「ヘソディムの話」
第24話に引き続き、現在開発中のAI(人工知能)を活用した「HeSoDiM-AIアプリ」(以下、AIアプリ)の特徴に迫りたいと思います。
③ HeSoDiM-AIの特徴3:『内挿』データを超える結果を出さない
前回上げたHeSoDiM-AIの特徴のひとつ「AIが出す結果は、データの質と量に依存している」を理解するうえで、『内挿』という言葉を知っていただきたいと思います。AIではよく使われる言葉のひとつです。
データから何かを予測する時に、学習に用いたデータの範囲内で出力する場合、『内挿』というそうです。それに対して、学習に用いたデータの範囲外で出力をすることを『外挿』といいます。また、AIには「強いAI」と「弱いAI」があり、「弱いAI」は内挿しかできないとのことです。HeSoDiM-AIは「弱いAI」に該当するため、学習に用いたデータの範囲内で出力する(データに依存する)ことになります。それに対して「強いAI」とは、たとえば、ヒトや鉄腕アトムのように、人間がもつ知能をそのままもっているAIとのことで、外挿も可能となると考えることができます。ちなみに、現在使われている多くのAIは「弱いAI」に該当するとのことです。
「データに依存する」などの言葉を初めて聞いた方にとっては、難しいことのように感じられるかもしれませんが、第18話から第21話で仮説検証を勉強した皆さんには違和感はないのではないかと思います。「帰納的推論の場合、データを超える仮説は出せない」など、同じ言葉を紹介していたからです。このように、AIの特徴を理解する上でも、仮説検証の考え方がなんとなく役立っているのではないかと思います。
④ HeSoDiM-AIの特徴4 一般解と特殊解、第四の科学でAIを使いこなす
HeSoDiM-AIの特徴は、第18話から第21話の仮説検証でお話した「一般解」(法則など、土壌病害では理想的には全圃場を説明できる解)と「特殊解」(圃場毎に説明できる解)、さらに「第四の科学」の視点で考えてみると理解しやすいと思います。
まず、HeSoDiM-AIの特徴「AIが出す結果は、データの質と量に依存している」と「データ数がある程度多いことが前提ではあるが、仮にAIが荒唐無稽な診断項目を表示したとしても、ただちに否定することなく、その結果は、データを収集した地域や栽培環境に適した診断項目を導き出しているかもしれないと考えて対応することも重要である。」について解説します。
AI アプリが出す情報は、解析に用いたデータ数が多いほど、どの圃場にも対応できる解、すなわち一般解に近づくことが期待されます。しかし実際には、全国の圃場についてデータを収集することは簡単にはできませんので、地域版がまず作られることになります。地域版の特徴は、地域毎の最適解、すなわち特殊解を提供していることだと考えることができます。そして地域版(特殊解)が複数できると、それらから広域版(一般解に近づく)を作るという作業が続くことになります。初めてHeSoDiM-AIを活用する方の場合、自分の圃場(特殊解)が、どこかの地域版(地域の特殊解)に近いのか、広域版(より一般解に近い)に近いのかは、検証しながら活用していくことが重要です。
次に、HeSoDiM-AIの特徴「その荒唐無稽な診断項目の有効性について、実際に圃場で「科学的」に『仮説検証』を通じて確認するように心がける。」についてですが、AI アプリの診断の有効性については、常に科学的視点に立って疑いながら取り組むことも重要です。そこで必要なのが有効性の検証です。そしてその際に、「第四の科学」の考え方が必要だと思います。
たとえ理解できない要因(診断項目)があったとしても、その要因と発病との因果関係にこだわるのではなく、生産現場で有効だった頻度(第四の科学の言い方では、p<0.05)を基に、「このAIアプリは使える/使えない」と判断することが重要です。
言い換えると、「因果関係」ではなく、「相関関係」で考えることが重要になります(第21話で紹介)。
⑤ HeSoDiM-AIの特徴5 究極は「圃場毎の特殊解」を見つけ圃場を管理する
ヘソディムの究極は「圃場マニュアル」の作製とそれに基づく土壌病害管理です。
今回開発されたAIアプリを活用することにより、圃場毎の活動履歴を記録し、圃場に合った診断・対策を試行錯誤することで、最終的にはAIアプリを活用して生産者が所有する全ての圃場について、圃場毎の対策を実現したいと考えています。
■執筆者プロフィール
東京農業大学生命科学部分子微生物学科植物共生微生物学研究室
教授 對馬誠也(つしま せいや)
1978年 北海道大学農学部農業生物学科卒業
1980年 北海道大学大学院修士課程 修了
1995年 博士号授与(北海道大学) 「イネもみ枯細菌病の生態と防除に関する研究」
1980年 農林水産省九州農業試験場病害第一研究室
1991年 農林水産省農業環境技術研究所微生物管理科
1995年 農林水産省東北農業試験場総合研究第3チーム
2000年 農林水産省農業環境技術研究所微生物管理科
2001年 独立行政法人農業環境技術研究所農業環境インベントリーセンター微生物分類研究室室長
2007年 独立行政法人農業環境技術研究所生物生態機能研究領域長
2009年 独立行政法人農業環境技術研究所農業環境インベントリーセンター長(2015年退職)
2015年 非営利活動法人活動法人圃場診断システム推進機構理事長
2017年 東京農業大学生命科学部分子微生物学科植物共生微生物学研究室 教授
現在に至る