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第4話・ヘソディムマニュアルの紹介(2)
〜東京農業大学・對馬先生の「ヘソディムの話」

前回は、ヘソディムマニュアルの基本について紹介しました。今回は各県、農研機構が作成した具体的なヘソディムマニュアルについて紹介していきます。

 


 

各県、農研機構が作成したヘソディムマニュアル

 

 2013年発行のヘソディムマニュアルには、トマト青枯病(兵庫県)、ショウガ根茎腐敗病(高知県)、レタス根腐病(長野県)、ダイズ茎疫病(富山県)、アブラナ科野菜根こぶ病(近畿中国四国農業研究センター)、ブロッコリー根こぶ病(香川県)、キャベツ根こぶ病(三重県)の8マニュアルが掲載されています。さらに、引き続き実施された農林水産省の事業「次世代型土壌病害診断・対策支援技術の開発」(平成25~27年度)では、2016年にショウガ根茎腐敗病(高知県、長崎県)、キャベツバーティシリウム萎凋病(群馬県)、ネギ黒腐菌核病(茨城県、静岡県)、セルリー萎黄病(長野県)、ハクサイ黄化病(長野県)、レタスビックベイン病(兵庫県、香川県)、レタス菌核病(兵庫県、香川県)、イチゴ炭疽病(三重県)、イチゴ萎黄病(三重県)、ジャガイモそうか病(長崎県)の14マニュアルが作られました(図参照)。2つの事業で合わせて16病害、合計20マニュアルが作られたことになります。

 

 

 とくに、2016年の事業では意識的に、①同じ病害のマニュアルを複数の県に作成してもらう、②県内の一つの作物を対象にして2つの病害のマニュアルを作成してもらう、ことをお願いしました。マニュアルは地域毎に異なることと、同じ作物のマニュアル間で防除技術の使用では競合が起こる場合があることを関係者に理解してもらいたかったからでした。一例として、三重県が行ったイチゴ萎黄病と炭疽病の研究では、萎黄病に抵抗性の品種が炭疽病には弱いことがわかり、萎黄病と炭疽病が併発している場合には、マニュアル間で調整しながら使う必要があることがわかりました。

 


 

各県、農研機構のマニュアルの紹介

 

1)アブラナ科野菜根こぶ病のヘソディムマニュアル
 アブラナ科野菜根こぶ病は、全てのアブラナ科野菜に感染して多くの被害をもたらす病害です。さらに国内でも最も多くの文献がある病害であったことから、特に多くのマニュアルが作成されていますので、一部を紹介します。

 

ア.農研機構近畿中国四国農業研究センターのアブラナ科野菜根こぶ病マニュアル
 このマニュアルはアブラナ科野菜全般を対象として作成されました。最初に「防除の現状と問題点」(図参照)で、根こぶ病全体の問題について整理しています。次に「診断」「評価」「対策」については、意識的にどの作物にも共通の情報を提供しています。

 

 


▲アブラナ科野菜根こぶ病マニュアル

 

たとえば、「診断」の中では、第3話で述べた「DRC診断」(図参照)について、図を示しながら分かりやすく紹介していますので、その一部を紹介します。

 

 

《DRC診断》

 

 DRC診断の考え方(①)、ポット試験の接種法(②)、同評価法(③)を図や写真を使って解説しています。接種では、病原菌密度を変えて接種し、菌密度毎の発病度を求めてその点を結んで曲線を書きます。一例として、同じ作物、病原菌でもDRCパターンが黒土と褐色土で明らかに異なることがわかると思います(④)。黒土は発病助長的、褐色土は発病やや抑止的な土壌であることが簡単にわかります。DRC診断がある程度実際の圃場の発病抑制性/助長性を示すことは明らかになっています(Tsushimaら、2010)。

  

 また、DRC診断を用いることにより、発病助長土壌を用いて葉ダイコンの病原菌低下及び発病低減効果を調べた時に、同じ病原菌密度低減効果があっても、発病が中程度の時には発病軽減効果がみられるが、発病が多い時には効果がみられないことを実験的に示すことができました。このことから、圃場の発病程度や発病助長性(圃場の体質)を知らずに、葉ダイコンの発病抑制効果を安易に論じるのは注意する必要があることがわかりました(Murakamiら、2000)。

 

 

 「対策」では、過去の文献情報と試験結果を整理し(表参照)、それぞれの防除技術が発病ポテンシャルのどのレベルで活用できるか一目でわかるように示しています。各地で根こぶ病マニュアルを作る際の参考になると考えています。

 

 

今回はここまで。次回はキャベツとブロッコリーの根こぶ病マニュアルについてご紹介します。

 


 

■執筆者プロフィール
東京農業大学生命科学部分子微生物学科植物共生微生物学研究室
教授 對馬誠也(つしま せいや)

1978年 北海道大学農学部農業生物学科卒業
1980年 北海道大学大学院修士課程 修了
1995年 博士号授与(北海道大学) 「イネもみ枯細菌病の生態と防除に関する研究」
1980年 農林水産省九州農業試験場病害第一研究室
1991年 農林水産省農業環境技術研究所微生物管理科
1995年 農林水産省東北農業試験場総合研究第3チーム
2000年 農林水産省農業環境技術研究所微生物管理科
2001年 独立行政法人農業環境技術研究所農業環境インベントリーセンター微生物分類研究室室長
2007年 独立行政法人農業環境技術研究所生物生態機能研究領域長
2009年 独立行政法人農業環境技術研究所農業環境インベントリーセンター長(2015年退職)
2015年 非営利活動法人活動法人圃場診断システム推進機構理事長
2017年 東京農業大学生命科学部分子微生物学科植物共生微生物学研究室 教授
現在に至る