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第45話・ダイズ黒根腐病マニュアルの紹介②~圃場診断システム推進機構・對馬理事長の「ヘソディムの話」

今回は、第44話に引き続きダイズ黒根腐病マニュアルを取り上げ、ダイズ黒根腐病マニュアルの診断方法や手順、ヘソディムマニュアルとの違いをご紹介します。

 

 

ダイズ黒根腐病マニュアル(作成:農研機構)
(情報提供:農研機構植物防疫部門 越智 直 氏)

 

③ ダイズ黒根腐病マニュアルの診断~対策に関する手順内容等の紹介

ア)診断と発病程度の評価
最初に病徴観察による診断法についての解説があり、診断①~③で、葉、地際・地下部、罹病個体の根の表皮、内部の症状、罹病個体の根の切断面の症状について説明されています。診断結果は、罹病株率、重症株率、発病程度で評価します。

 

イ)発病リスクの診断と軽減対策
【診断項目】
診断1:過去にダイズを栽培したか
診断2:過去にダイズ黒根腐病が発生したか
診断3:前年の栽培はダイズか水稲か
診断4:今年の作付を水稲作に変更できるか
診断5:圃場の発病リスクを確認し、導入可能な対策はあるか

診断5には、以下の補足説明があります。
「圃場の排水性、播種作業、中耕培土作業における「ダイズ黒根腐病の発病リスク」を判定します(13ページの表1)。発病リスクがあると判定された場合、実行可能な対策を実施してください。発病リスクなしの場合、あるいは対策導入不可の場合、ダイズ黒根腐病以外の対策を優先してください。圃場の排水性、播種作業、中耕培土作業などの圃場環境とダイズ黒根腐病発病リスクの関係についての詳細は(省略)をご覧ください。」

 

ウ)診断と対策の手順(図1)
診断~対策への手順は図1のとおりです。


エ)各診断項目とダイズ黒根腐病発病リスクの関係および発病リスクが高い場合の対策
診断結果で発病リスクの評価を行い、表1で示されているリスクに応じた対策を講じます。


オ)圃場におけるダイズ黒根腐病のリスク要因
リスク要因について、診断項目ごとにデータに基づいた情報が掲載されています。

● 栽培履歴における発病リスク要因
1)過去の発病履歴 2)大豆連作年数 3)大豆作前水稲連作年数
例えば 1)に関しては、『「発病履歴あり」の圃場では、本病の発病リスクが高く、「発病履歴なし」の圃場と比べ危険であると考えられました。』など詳しく説明されています。

 

● 圃場環境における発病リスク要因
1)排水性の達観評価 2)額縁明渠、補助暗渠の施工
例えば1)に関しては、『排水不良圃場において、ダイズ黒根腐病の発病程度が高いことが示されました。』とデータを示して解説されています。

 

● 播種作業における発病リスク要因
1)播種日・播種様式 2)チアメトキサム・フルジオキソニル・メタラキシル(TFM)水和剤による種子塗沫処理

 

● 中耕培土作業における発病リスク要因
1)実施回数 2)実施時期

 

④ ダイズ黒根腐病マニュアルとヘソディムマニュアルの比較

ア)両マニュアルの類似点

・健全圃場も診断の対象にしている点。
・診断、評価、対策がセットになっている点。
・診断結果を基に発病リスクを評価している点。
・発病リスクに応じた対策を指導している点。

 

イ)両マニュアルでやや異なる点
・ヘソディムでは「発病リスク」ではなく「発病ポテンシャル」と表記している点。
(解説)初期のヘソディムマニュアルでは「発病リスク」と表記していました。「リスク」という用語には厳密には定義があり、ヘソディムではそこまで根拠を示すことができないと考えたため、「発病ポテンシャル」(発病しやすさ)という表現を用いることにしました。

・ダイズ黒根腐病マニュアルでは「発病リスク」を『高・低』の2段階に分けているが、ヘソディムでは「発病ポテンシャル」を原則3段階に分けている点。

 

ウ)まとめ
両マニュアルを比較してみると、ヘソディム用語を使わないマニュアルの場合、ヘソディムマニュアルの利用できる部分を活用しつつ、作成者のオリジナルな発想も入れることができるメリットがあると考えます。

 

⑤ 最後に
「ヘソディムの話」第2話でも書きましたが、「定義された概念」(IPM、ヘソディムなど)は時に、個別技術より、科学の発展に寄与し、社会に大きな影響を及ぼすことがあります。概念の基本的な部分は変更できませんが(基本的部分が変わる場合には別のものとして提案すればよい)、概念を有効活用するために定義や戦略、戦術については、時代に合わせて「拡張」してもよいと思っています。たとえばIPMについても、定義が時代とともに変わっていますし、多くの「IPM戦略」が提案されています。こうすることにより、初期のIPMの定義の範囲ではできなかったことができるようになりました。ヘソディムにおいても、マニュアル作成者の考えや作物・病害の違い、栽培目的、地域の事情等によって、必要ならばヘソディムの「定義の拡張」や「ヘソディム戦略」を提案していただけたらと思っています。

 

【参考文献】
● ダイズ黒根腐病のリスク診断・対策マニュアル.農研機構中央農業研究センター.2020年3月.
● 對馬誠也: 第11回バイオコントロー研究会レポート 7,1-12 (2001).

(解説)IPMの定義の変遷、戦略を紹介しています。

 


 

■執筆者プロフィール
特定非営利活動法人 圃場診断システム推進機構
理事長 對馬誠也(つしま せいや)

1978年 北海道大学農学部農業生物学科卒業
1980年 北海道大学大学院修士課程 修了
1995年 博士号授与(北海道大学) 「イネもみ枯細菌病の生態と防除に関する研究」
1980年 農林水産省九州農業試験場病害第一研究室
1991年 農林水産省農業環境技術研究所微生物管理科
1995年 農林水産省東北農業試験場総合研究第3チーム
2000年 農林水産省農業環境技術研究所微生物管理科
2001年 独立行政法人農業環境技術研究所農業環境インベントリーセンター微生物分類研究室室長
2007年 独立行政法人農業環境技術研究所生物生態機能研究領域長
2009年 独立行政法人農業環境技術研究所農業環境インベントリーセンター長(2015年退職)
2015年 非営利活動法人活動法人圃場診断システム推進機構理事長
2017年 東京農業大学生命科学部分子微生物学科植物共生微生物学研究室 教授(2022年退職)

2022年 NPO法人圃場システム推進機構内にHeSoDiM-AI普及推進協議会を設立(代表)

現在に至る