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第25話・豆類の菌核病 後編
〜農学博士・児玉不二雄の植物の病気の話
前回(第25話・豆類の菌核病 前編)の続きです。
《 伝染経路 》
図1に菌核病の伝染経路を示しました。主役はもちろん菌核です。被害を受けた植物の茎、葉、莢などの内外に形成された菌核は、豆の収穫の時に畑に散乱し、翌年キノコを作ります(写真6)。このキノコは子のう盤と呼ばれ、その表面には子のうがビッシリと並んでいます。子のう(子袋)には、8個の胞子が入っており、袋が破れて胞子が飛散します。この胞子によって、病気が蔓延して行くのです。
子のう盤ができるためには、湿度と遮光(=ジメジメした薄暗がり)が必要です。ですから、早くに地表面を覆う作物が栽培された畑ほど、キノコの形成時期も早くなります。牧草地では6月上旬、テンサイおよびバレイショ畑では6月下旬~7月上旬、インゲンマメ畑では7月下旬~8月上旬、アズキ畑では8月中旬に、子のう盤(キノコ)が盛んに作られます。
▲図1 菌核病菌の伝染経路(児玉・山田原図)
▲写真6 子のう盤:開いた傘の直径は4~7mm程度
《 花弁感染・発生しやすい気象 》
子のう胞子は健全な組織に侵入できず、枯死組織や傷口から侵入します。老化または落下した花弁(=花びら)に胞子が付着して増殖し、感染力を強めて、それらに接触している健全な葉や莢にまん延します。花弁感染という、この病気の感染・発病の主体です。開花後の気象が、日照不足で多湿なときに多発します。一方、乾燥条件下では病勢は停滞します。
《 病原菌と寄主範囲 》
病原菌は、Sclerotinia sclerotiorum(スクレロティニア・スクレロティオルム)という名前のカビです。ちょっと舌を噛みそうですが10回も唱えると、口になじみます。インゲンマメなどの豆類の他、キュウリ、ジャガイモ、ナス、トマト、その他多数の作物がこの病害に侵されます。
《 防除のポイント 》
連作すると菌核の密度が高まるので適当な輪作をすること。密植、多肥栽培、窒素質肥料の多用は避けましょう。茎葉への薬剤散布は、豆類の開花期に重点的に行います。
今回のキーワード:菌糸、菌核、子のう盤
■執筆者プロフィール
児玉不二雄 Fujio Kodama
農学博士・(一社)北海道植物防疫協会常務理事。北海道大学大学院卒業後、道内各地の農業試験場で研究を続け、中央農業試験場病理科長、同病虫部長、北見農業試験場長を歴任。2000〜2014年まで北海道植物防疫協会会長を務める。
45年以上にわたって、北海道の主要農産物における病害虫の生態解明に力を尽くし、防除に役立てている植物病理のスペシャリスト。何よりもフィールドワークを大切にし、夏から秋は精力的に畑を回る。調査研究の原動力は、“飽くなき探究心”。
※本コラムの内容は、2009年よりサングリン太陽園ホームページ 「太陽と水と土」に連載しているコラムを加筆・修正したものです
※写真掲載:清水基滋氏、谷井昭夫氏、著者