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第25話・豆類の菌核病 前編
〜農学博士・児玉不二雄の植物の病気の話
きれいなキノコの胞子が、病気を蔓延させる作物の病気があります。菌核病がそれです。この病気は、豆類の大敵です。豆の莢の部分に感染して、種子の生育を破壊するのです。つまり豆の収穫ができなくなります。豆類の中では、特にインゲンマメでの発生が目立ちます。ちなみに、北海道ではインゲンマメを、インゲン・菜豆と言ったりしますが、正式名称はインゲンマメです。
さてその症状はー。
《 病 徴 》
写真1、2、3をご覧ください。インゲンマメ、ダイズ、アズキとも共通の症状が見られます。葉・茎・莢のいずれの部分でも、はじめは濃い緑色の病斑を生じ、これが拡大して軟らかく腐ってきます(=軟腐症状といいます)。そしてこの部分に白色綿状のカビ(=菌糸)が生じます。これが病原菌の正体です。
菌糸に接触した茎や莢は次々と侵され、株全体にまん延します。病状は末期を迎え、白い菌糸の塊は、徐々に黒みを帯び、ついにネズミ糞状の固形物になります。この固形物こそ、菌核です(写真4、5)。
▲写真1 インゲンマメ菌核病
▲写真2 ダイズ菌核病
▲写真3 アズキ菌核病
▲写真4 茎に付着した菌核
▲写真5 純粋培養した病原菌の菌糸(白色綿状)と菌核
伝染経路や防除法については後編で解説します。
■執筆者プロフィール
児玉不二雄 Fujio Kodama
農学博士・(一社)北海道植物防疫協会常務理事。北海道大学大学院卒業後、道内各地の農業試験場で研究を続け、中央農業試験場病理科長、同病虫部長、北見農業試験場長を歴任。2000〜2014年まで北海道植物防疫協会会長を務める。
45年以上にわたって、北海道の主要農産物における病害虫の生態解明に力を尽くし、防除に役立てている植物病理のスペシャリスト。何よりもフィールドワークを大切にし、夏から秋は精力的に畑を回る。調査研究の原動力は、“飽くなき探究心”。
※本コラムの内容は、2009年よりサングリン太陽園ホームページ 「太陽と水と土」に連載しているコラムを加筆・修正したものです
※写真掲載:清水基滋氏、谷井昭夫氏、著者