- 2024年11月
- 2024年10月
- 2024年7月
- 2024年6月
- 2024年5月
- 2024年4月
- 2024年1月
- 2023年12月
- 2023年11月
- 2023年10月
- 2023年8月
- 2023年4月
- 2022年6月
- 2022年5月
- 2022年4月
- 2022年3月
- 2022年2月
- 2022年1月
- 2021年12月
- 2021年11月
- 2021年10月
- 2021年9月
- 2021年8月
- 2021年7月
- 2021年6月
- 2021年5月
- 2021年4月
- 2021年3月
- 2021年2月
- 2021年1月
- 2020年11月
- 2020年10月
- 2020年8月
- 2020年4月
- 2020年3月
- 2020年2月
- 2020年1月
- 2019年12月
- 2019年11月
- 2019年10月
- 2019年9月
- 2019年8月
- 2019年7月
- 2019年6月
- 2019年5月
- 2019年4月
- 2019年3月
- 2019年2月
第36話・ヘソディム成功事例の紹介とそこから考える普及の課題②~圃場診断システム推進機構・對馬理事長の「ヘソディムの話」
第35話でご紹介した三重県のJAみえきたの取り組みを踏まえ、その後の県内での取り組みと、ヘソディムが成功した理由について考えてみたいと思います。
Ⅶ その後の県内での取り組み
(三重県鈴木啓史氏、中嶋香織氏からの情報)
(1) ナバナ 根こぶ病
・JAみえきたナバナ(四日市市)、生産者10名程度
取り組み)圃場ごとの発病ポテンシャルの共有、診断レベルに合わせた薬剤処理、発病ポテンシャルの高い圃場でおとり大根作付け、ヘソディムを実施したことで既発生圃場の発病度が抑えられている。現在はJAみえきた、県がヘソディムの考え方を普及している段階です。
(2) タカナ 根こぶ病
・たかな生産組合(熊野市)、生産者10名程度
取り組み)圃場ごとの発病ポテンシャルの共有、診断レベルに合わせた薬剤処理、発病ポテンシャルの高い圃場でミネカル処理やおとり大根作付け、転作(作付け回避)、ヘソディムを実施したことで既発生圃場の発病度が抑えられている。
成果)2017年の最初のヘソディム診断では15圃場のうち6圃場で病原菌が検出されました。そのうち2020年まで継続して作付けする2圃場で病原菌が検出されなくなり、発病調査でも根こぶ病の発生は認められなくなりました。1圃場は2017年にミネカル処理とおとり大根、その後はオラクル顆粒水和剤で対策、もう1圃場は2017年にオラクル粉剤+顆粒水和剤の体系処理、2018年はオラクル顆粒水和剤、2019年からは病原菌が検出されなかったため無処理で作付けしています。現在は別の1圃場のみ病原菌が継続して検出されていますが、発病度が低く収量への影響は小さいとのことでした。
Ⅷ JAみえきたが成功した理由
JAみえきたの成功例は、病原菌密度を検出限界以下にした点で画期的だと思います。成功した理由をわたしなりに考えてみました。
(1) 目的:シンプルで明確、病原菌密度の削減(病害の抑制ではない)
なんといっても「病原菌を減らす」という目的が明確です。通常「病気を抑制(防除)する」とは言いますが、「病原菌を減らす」と明確にしている例は少ないと思います。
(2) 技術:診断・対策がシンプル
土壌採取、ポット試験(発病検定)、病原菌密度推定、土壌理化学性(pHなど)と、診断項目を最小限にしていることは、「取り組みやすさ」に繋がる重要な要素です。一方、新技術であるDNA診断(病原菌密度推定技術)をいち早く行っている点、またオラクル粉剤を用いて徹底的に病原菌を減らすことを目指しているのも特徴です。
(3) 体制:熱意のある指導者、県・JAの連携
成功した一番の理由は、熱意のあるJA・県の指導員の方の存在とその指導力だと思いました。この熱意と指導力がなければ、どんな目標、技術があってもうまくいかなかったと思います。ヒアリングを通じて、JAの営農指導員M氏が生産者にとても信頼されていることがわかりました。ヘソディム指導員の理想の姿だと思います。
(4) 三重県マニュアルを基に、地域に適したマニュアル作り
三重県のマニュアルを参考にしつつ、JAでは地域に合った診断法、対策を考えているのも特徴といえます。たとえば、三重県ではセル検定を推奨していますが、JAみえきたでは「ポット試験」を行っていました。目標が明確なので、診断、対策ともに行うべきことを絞り込んでいます。ヘソディムでは、自分たちの地域に最適なマニュアルを作ることが必要です。
(5) 病原菌が検出できなくなっても健康診断を継続
なんといっても強調したいのは、病原菌がいなくなっても圃場の診断を継続していることです。一次予防を徹底しており、まさにヘソディムの理想の姿です。生産者によっては、その後の対応を軽視してしまうこともあるかと思うのですが、指導員がしっかり指導されているのだと思います。
(6) 生産者と指導員(県、JA)の強い連携
指導員(県、JA)と生産者の信頼関係、指導員の指導力、生産者の実行力が成功の秘訣だと思いました。
今回はここまで。次回は、ヘソディム成功例2つ目をご紹介いたします。
■執筆者プロフィール
特定非営利活動法人 圃場診断システム推進機構
理事長 對馬誠也(つしま せいや)
1978年 北海道大学農学部農業生物学科卒業
1980年 北海道大学大学院修士課程 修了
1995年 博士号授与(北海道大学) 「イネもみ枯細菌病の生態と防除に関する研究」
1980年 農林水産省九州農業試験場病害第一研究室
1991年 農林水産省農業環境技術研究所微生物管理科
1995年 農林水産省東北農業試験場総合研究第3チーム
2000年 農林水産省農業環境技術研究所微生物管理科
2001年 独立行政法人農業環境技術研究所農業環境インベントリーセンター微生物分類研究室室長
2007年 独立行政法人農業環境技術研究所生物生態機能研究領域長
2009年 独立行政法人農業環境技術研究所農業環境インベントリーセンター長(2015年退職)
2015年 非営利活動法人活動法人圃場診断システム推進機構理事長
2017年 東京農業大学生命科学部分子微生物学科植物共生微生物学研究室 教授(2022年退職)
2022年 NPO法人圃場システム推進機構内にHeSoDiM-AI普及推進協議会を設立(代表)
現在に至る