- 2024年12月
- 2024年11月
- 2024年10月
- 2024年7月
- 2024年6月
- 2024年5月
- 2024年4月
- 2024年1月
- 2023年12月
- 2023年11月
- 2023年10月
- 2023年8月
- 2023年4月
- 2022年6月
- 2022年5月
- 2022年4月
- 2022年3月
- 2022年2月
- 2022年1月
- 2021年12月
- 2021年11月
- 2021年10月
- 2021年9月
- 2021年8月
- 2021年7月
- 2021年6月
- 2021年5月
- 2021年4月
- 2021年3月
- 2021年2月
- 2021年1月
- 2020年11月
- 2020年10月
- 2020年8月
- 2020年4月
- 2020年3月
- 2020年2月
- 2020年1月
- 2019年12月
- 2019年11月
- 2019年10月
- 2019年9月
- 2019年8月
- 2019年7月
- 2019年6月
- 2019年5月
- 2019年4月
- 2019年3月
- 2019年2月
第22話・HeSoDiM-AIの紹介(1)~東京農業大学・對馬先生の「ヘソディムの話」
ここまで、ヘソディムに関するマニュアル、個別技術(診断、防除技術など個々の技術のこと)に加え、ちょっと話題を変えて仮説検証のお話をしてきました。
仮説検証の話題が出たところで、現在農水省委託プロジェクト(以前本誌で紹介、2017-2021)で開発中のAI(人工知能)を活用した「HeSoDiM-AIアプリ」(以下、AIアプリ)の紹介をしたいと思います。前回までお話した仮説検証についての知識が、AI(人工知能)を理解するのにとても役立つと思います。なお、AIアプリを紹介する中で、一部AI(人工知能)そのものについてのお話しをすることになりますが、わたし自身はAIの専門家ではありませんので、プロジェクトリーダー(吉田重信氏)とAIアプリ開発者((株)システム計画研究所)の了解を得て、現在プロジェクトで実施中の「HeSoDiM-AI普及のための勉強会」の講義内容等を中心にお話したいと思います。
1. 「AI(人工知能)に使われる者は失敗する」
わたしは、このプロジェクトの中で「AIアプリのジビネスモデル作り」の課題を担当しています。2017年のプロジェクト開始より、全国の関係者からAIアプリ開発のための情報収集を行い、情報を基にほぼ毎月関係者と検討してきました。この検討の際に、AI開発者から言われたことが今でも忘れられません。それは上記のサブタイトルの文章でした。AI関係者の経験では、『どんなAI技術についても、ユーザーが「AIを過信する」ことが結構多い、その結果過信するユーザーの多くはAIに使われて失敗する』とのことでした。このことは、単にユーザーのニーズに合ったAIアプリを開発するだけではダメだということを意味しており、普及(社会実装)の難しさを感じました。
このようなことから、検討会では、早い段階で「AIを使いこなすユーザーの育成」も同時に取り組む必要があるということになり、いくつかの解決策を考えました。
1つ目は、将来ユーザーとなる生産者の「AIリテラシー」を向上させるための講習会等を開催することです。
2つ目は、ヘソディムでは元々「指導員」の育成に取り組んできましたが、その「指導員」の「AIリテラシー向上」を目指すことです。
このため、全国各地で「ヘソディム」と「AIアプリ」の紹介をする際には、必ず「AIリテラシー向上」のためのお話も行ってきました。(現在開催中の「勉強会」もその取り組みのひとつです。)
まずは、HeSoDiM-AIアプリの紹介をしたいと思います。
2.へソディム支援HeSoDiM-AIアプリとは
今回開発している「AIを活用したへソディム支援システム」は、データの収集・解析・保存・情報提供を行う『HeSoDiM-AI』と、HeSoDiM-AIに診断情報等を送信し、その結果出てくる情報を見える化してユーザーに届け『HeSoDiM-AIアプリ』(以下、Aiアプリと称す)で構成されています。AIアプリはスマホ上でへソディムによる圃場毎の土壌病害管理を行うもので、どなたでも活用できます。診断項目を入力し、AI診断ボタンをクリックすると、発病ポテンシャルレベルが表示され、それに応じて対策技術も表示されるようになっています。
① AIアプリの立ち上げと圃場登録
● HeSoDiM-AIアプリのトップ画面(左)と圃場登録画面(中央・右)
トップ画面でユーザーIDとパスワードを入力すると、全国の地図(Googleマップ)が出てきます。地図を拡大して自分が登録したい圃場を見つけたら、圃場の4隅を複数個所指で押さえるとバルーンが出ますので、それを確認したら登録します。画面上の圃場が四角で囲まれているのが確認できます。
② 圃場のマップ一覧
圃場マップについては、移動、拡大・縮小が可能です。航空写真と地図の画面はワンタッチで切り替えることができます。
このAIアプリの一番の特徴は、圃場を「発病ポテンシャル」のレベルで色分けしていることです。
表示は、青:レベル1、黄:レベル2、赤:レベル3、白:未設定となっています。航空写真上の色分けした圃場を見ることによって、農作業の順番を決めたり、現在どの圃場がどの程度「発病しやすい状態か」が一目でわかるようになっています。その図を見ながら、グループ内の関係者と作業工程や対策についての相談を効率的に行うことができると考えます。
● 登録圃場の航空写真(左)と登録圃場一覧(右)
登録圃場一覧の画面には圃場名が出ていますが、左端にそれぞれの圃場の発病ポテンシャルのレベルが一目でわかるように色分けされています。必要に応じて、ソータをかけて発病ポテンシャルのレベル毎に圃場を表示することもできます。
③ 全国の圃場登録状況
地図上に多くの点(白、赤等)がついていると思います。これは登録されている圃場を示しています。これまで、プロジェクトに参加している県の方が中心となってマッピングしたもので、現在、北海道から九州まで全国各地で2000以上の圃場が登録されています。プロジェクトでは、これらの登録圃場を使って、AIアプリのための情報収集やAIアプリの有効性等についての実証試験が行われています。
● プロジェクト参加県による圃場登録状況
今回はここまで。次回も引き続きHeSoDiM-AIアプリについてご紹介いたします。
■執筆者プロフィール
東京農業大学生命科学部分子微生物学科植物共生微生物学研究室
教授 對馬誠也(つしま せいや)
1978年 北海道大学農学部農業生物学科卒業
1980年 北海道大学大学院修士課程 修了
1995年 博士号授与(北海道大学) 「イネもみ枯細菌病の生態と防除に関する研究」
1980年 農林水産省九州農業試験場病害第一研究室
1991年 農林水産省農業環境技術研究所微生物管理科
1995年 農林水産省東北農業試験場総合研究第3チーム
2000年 農林水産省農業環境技術研究所微生物管理科
2001年 独立行政法人農業環境技術研究所農業環境インベントリーセンター微生物分類研究室室長
2007年 独立行政法人農業環境技術研究所生物生態機能研究領域長
2009年 独立行政法人農業環境技術研究所農業環境インベントリーセンター長(2015年退職)
2015年 非営利活動法人活動法人圃場診断システム推進機構理事長
2017年 東京農業大学生命科学部分子微生物学科植物共生微生物学研究室 教授
現在に至る