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第7話・ヘソディムマニュアルの紹介(4)
〜東京農業大学・對馬先生の「ヘソディムの話」
これまで、アブラナ科野菜根こぶ病マニュアルの紹介をしてきました。今回から、他の病害のヘソディムマニュアル(2013)について紹介していきます。
兵庫県のトマト青枯病マニュアル
青枯病は細菌(Ralstonia solanacearum)によって起こる難防除土壌病害です。感染すると青いまま植物体が萎れることから「青枯病」と名付けられたようです。前述の根こぶ病と同様に、発生が激しくなると防除が極めて難しくなります。私たちは根こぶ病と同様に、予防的対策がとても重要な病害と考えています。
兵庫県のマニュアルの特徴は、病原細菌が土壌深くに生存しているため、土壌深くまで診断を行い、対策を講ずることが必要としているところです。
【診断】
診断の手順は、(1)発病履歴の調査、(2)病原菌の生息深度の調査、(3)土質の調査、(4)総合リスクの評価、(5)防除対策の選択・実施、となっています。それぞれの診断項目についてリスクポイントを出した後、それらを合計して、総合的な発病リスクを推定します。診断では、生産者への聞き取りが重要な項目になっています。ヘソディムでは、生産者の日頃の観察や作業記録および、それらの情報から生産者自身が課題を見つけることを重視していますので、まさにそれを実践しています。
兵庫県は病原菌の土中での動態を詳細に調査した結果を基に、「青枯病菌は地下深さ1mでも生息します。そのため、作土層で病原菌を検出しなかった場合でも発病につながる場合があります。さまざまな土壌消毒により、青枯病菌を死滅させる方法がありますが、どの層まで消毒効果がおよんでいるかで、発病程度が異なるため、深さ別に土壌をサンプリングし、青枯病菌の生息する深さを確認します。」(マニュアル)とし、図〈診断項目(2)〉の基準で評価しています。
さらに、サンプリングでは、検土杖(大起理化工業株式会社製ルートオーガー)を用い、表層から 30cm、30~60cm、60~90cm と3層に分けてサンプリングしています。さらに、診断項目(3)では土性調査をすることとして、「下層土まで砂質:0点」、「中層、下層に粘土質土壌あり:1点」、「全層粘土質土壌:2点」と基準を作っています。ここでも、下層まで調査を重視していることがわかります。このように、徹底的に下層の病原菌を考えるのが兵庫県マニュアルの特徴です。
他の診断項目としては、診断項目(1)として発病履歴があります。その内容は、「近年(5年程度)発病なし:0点」としており、かなり遡った発病履歴を重要としています。この理由は、青枯病菌が何年間も土中に生存していることが明らかになっているからです。この点については、アブラナ科野菜根こぶ病菌(原生動物)や、野菜の軟腐病菌(細菌)についても言えることです。しかし、発病履歴をどのくらい遡るかについては、土壌や環境(雑草の管理等)によって異なります。たとえば、ハクサイ根こぶ病菌はナズナに感染して増殖することがわかっていますので、仮に、対策として輪作、転作あるいは休耕にしてもアブラナ科の雑草を管理しない場合、土壌中の病原菌量は必ずしも減少していないことが考えられます。このため、雑草などの圃場管理の記録も重要です。本マニュアルでは、さらに、「近年抑制作型で発病あり:2点」、「前年抑制作型で発病あり:4点」、「直前の作型で発病あり:6点」としています。
【評価】
上記の点数(総合発病リスクポイント)を合計して以下の基準でリスクレベルを求めます。
【対策】
リスクレベルに応じて、下記の対策を講ずるようになっています。
今回はここまで。次回は、ショウガ根茎腐敗病マニュアルについてご紹介します。
■執筆者プロフィール
東京農業大学生命科学部分子微生物学科植物共生微生物学研究室
教授 對馬誠也(つしま せいや)
1978年 北海道大学農学部農業生物学科卒業
1980年 北海道大学大学院修士課程 修了
1995年 博士号授与(北海道大学) 「イネもみ枯細菌病の生態と防除に関する研究」
1980年 農林水産省九州農業試験場病害第一研究室
1991年 農林水産省農業環境技術研究所微生物管理科
1995年 農林水産省東北農業試験場総合研究第3チーム
2000年 農林水産省農業環境技術研究所微生物管理科
2001年 独立行政法人農業環境技術研究所農業環境インベントリーセンター微生物分類研究室室長
2007年 独立行政法人農業環境技術研究所生物生態機能研究領域長
2009年 独立行政法人農業環境技術研究所農業環境インベントリーセンター長(2015年退職)
2015年 非営利活動法人活動法人圃場診断システム推進機構理事長
2017年 東京農業大学生命科学部分子微生物学科植物共生微生物学研究室 教授
現在に至る