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第52話・全土壌病害に対応できるHeSo+EXの開発~圃場診断システム推進機構・對馬理事長の「ヘソディムの話」
本シリーズの第22話から25話でヘソディムを支援するために開発したAIシステム「HeSoDiM-AI」の紹介をしましたが、その中で、ヘソディム支援のために開発されたAIアプリ「HeSo+(和名:ヘソプラス)」の活用法についてもお話しました。そして、第29話では、HeSoDiM-AI普及推進協議会(NPO法人圃場診断システム推進機構内に設置)で「HeSo+」の販売開始を報告しました。このHeSo+については、これまでに複数の県、民間企業、大学、個人の皆様に購入していただいています。また初めての方には、トライアルとして無料で使っていただいています。
その一方で、この普及活動を通して、HeSo+をさらに普及するために解決すべき課題も明らかになってきました。具体的には、①初めての人が使うために訓練する体制を作る必要がある、②HeSo+の活用が苦手な生産者に代わり圃場情報等を登録するヘソディム指導員を増やすことが重要である、③データ量に依存するHeSo+に対応できない土壌病害に対応できるAIアプリを開発する必要がある、などがあります。これらの課題のうち、①については、「HeSo+の実習会」の開催を企画しています。また、②については、本シリーズでも紹介していますが、「ヘソディム講習会」を開催して指導員をさらに増やしたいと考えています。今回は、③の課題を解決するために開発したHeSo+EXを紹介したいと思います。
HeSo+は、農水省委託プロジェクト(2017-2021、本誌で紹介済)に参加した多くの県の方々が収集したデータをHeSoDiM-AI(AIシステム)が解析して選抜した「診断項目」や、診断結果に基づく「圃場の発病ポテンシャル」(レベル1~3)を表示するAIアプリです。しかし、HeSo+はデータがない病害の診断はできません。
そこで、データがなくても、文献情報、圃場の情報を登録、蓄積して、土壌病害を管理できないかと考え、試行錯誤の末、HeSo+EXを開発しました。
以下に、HeSo+EXについて概略を紹介します。ぜひ、活用していただけたらと思います。
1.HeSo+EXとは
ユーザが独自に診断項目・診断基準・発病ポテンシャル基準を設定して土壌病害管理に活用できるHeSo+の新しい機能です。HeSo+では、この機能を使った診断を「EX診断」と呼んでいます。HeSo+は、膨大なデータからHeSoDiM-AIが選抜した診断項目を基に発病ポテンシャルのレベルを求め(以下、AI診断とします)、対策を支援するシステムです。しかし、実際の生産現場では、データ不足等によりAI診断で対応できていない病害が多数存在します。そこで、HeSo+EXは、どのような病害にも対応するために開発されました。(下図:HeSo+診断画面)
2.HeSo+EXの特徴
①HeSo+EXはHeSo+のオプション機能です。
②HeSo+EXを利用するためには、HeSo+を購入したのちに、別途登録が必要です。HeSo+を購入していれば、原則、追加料金はかかりません。
③HeSo+EXでは、病害の種類に限定されず、診断したい病害に使うことができます。AI診断が可能な対象病害についても、ユーザ独自の診断項目・診断基準・発病ポテンシャル基準に基づく土壌病害管理ができます。
3.HeSo+EXの使い方の概要
①あらかじめ文献情報・問診等を基にヘソディムマニュアル1.0(基本的な診断・評価・対策で構成)を作成し、そのマニュアルを参考にして診断・評価・対策をHeSo+EXに入力します。
②すべての入力データが蓄積されます。過去の情報を活用してユーザ独自の圃場管理ができるようになります。
4.HeSo+EXの活用場面
①AI診断の対象でない病害を診断したい場合に用います。
②AI診断の対象病害でも、ユーザが独自に対応する必要があると判断した場合にも用います。
注)本シリーズで、様々な病害の成功例やマニュアルの紹介の中でお話していますが、どの病害においてもマニュアルによる診断やHeSo+によるAI診断どおりに管理できない圃場があります。このような場合、ヘソディムでは生産者(指導者)自ら、経験や圃場の観察結果を基に、対象圃場独自の基準を設定して診断・対策を行う必要があります。そのような場合に、HeSo+EXが有効です。
5.最後に
HeSo+EXが開発されたことで、論理的にはすべての土壌病害でヘソディム管理ができるようになりました。慣れないうちは、入力や診断基準作りなどで悩むことがあるかと思いますが、私たち協議会ではHeSo+EXの実習会を開催する予定ですし、要望があればオンラインでの対応も実施したいと考えています。将来、HeSo+EXを自在に使えるようになることにより、病害の診断、対策に使うだけでなく、コミュニケーションツールとして活用することで生産者間、あるいは生産者とヘソディム指導員間の交流が進むことを期待したいと思います。
これまでのヘソディムの取り組みを通して、データが増えれば増えるほど圃場が実に多様であることが明らかになってきました。多数の圃場を所有している生産者にとっては、最初は、圃場毎に管理するのは大変だと思います。しかし、一度、圃場一つ一つの特徴を整理することができれば、その後は圃場毎に最適な管理ができ、持続的農業の推進にも貢献できると考えています。
また、以前も、このシリーズで、ヘソディムの概念を拡張して、他の有害動植物の管理にも役立ててほしいとお話しましたが、たとえば、病害でいえば、空気伝染性病害(地上部病害)でも一次予防重視の管理は重要だと考えますので、HeSo+EXを活用した管理に挑戦していただけたらと思います。
● HeSo+Ver4.1の操作説明(DiM-AI普及推進協議会HPより)
■執筆者プロフィール
特定非営利活動法人 圃場診断システム推進機構
理事長 對馬誠也(つしま せいや)
1978年 北海道大学農学部農業生物学科卒業
1980年 北海道大学大学院修士課程 修了
1995年 博士号授与(北海道大学) 「イネもみ枯細菌病の生態と防除に関する研究」
1980年 農林水産省九州農業試験場病害第一研究室
1991年 農林水産省農業環境技術研究所微生物管理科
1995年 農林水産省東北農業試験場総合研究第3チーム
2000年 農林水産省農業環境技術研究所微生物管理科
2001年 独立行政法人農業環境技術研究所農業環境インベントリーセンター微生物分類研究室室長
2007年 独立行政法人農業環境技術研究所生物生態機能研究領域長
2009年 独立行政法人農業環境技術研究所農業環境インベントリーセンター長(2015年退職)
2015年 非営利活動法人活動法人圃場診断システム推進機構理事長
2017年 東京農業大学生命科学部分子微生物学科植物共生微生物学研究室 教授(2022年退職)
2022年 NPO法人圃場システム推進機構内にHeSoDiM-AI普及推進協議会を設立(代表)
現在に至る