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未来社会を切り拓く「ムーンショット型研究開発事業」 農業領域の開発目標と8つのプロジェクトをご紹介!

急速に進む少子高齢化や甚大な被害をもたらす自然災害、地球温暖化など、多くの課題を抱える日本。科学技術でそれらの課題解決に果敢に挑戦し、未来社会の展望を切り拓いていくために、政府は現在「ムーンショット型研究開発事業」を推進しています。

同事業では、人々の幸福で豊かな暮らしの基盤となる「社会」「環境」「経済」の3つの領域から具体的な10個の目標を定めて、社会課題解決のための研究が進められており、農業領域はムーンショット目標5に据えられています。

今回の農トレでは、ムーンショット目標5の概要、実現に向けて進行中のプロジェクトの内容についてご紹介いたします。

 

内閣府HPより

 


 

<ムーンショット目標5>
2050年までに、未利用の生物機能等のフル活用により、地球規模でムリ・ムダのない持続的な食料供給産業を創出

 

内閣府HPより

 

農林水産省の資料によると、世界的な人口増加によって、2050 年には世界で必要な食料が2010年時点の 1.7 倍に達すると予想されています。安定した食料生産が求められる一方で、生産に作用する地球の環境変化も深刻さを増しています。人々が地球で安全に活動できる範囲を科学的に定義した”プラネタリーバウンダリー ( 地球の限界 ) ”では、肥料の過剰使用などによる「窒素とリンの生物地球化学的循環」や、絶滅の速度から見た「生物圏の一体性」の項目で、すでに限界値を超えていることが示されており、従来の方式だけでは地球の機能自体が破綻してしまう可能性も否定できません。
そこでムーンショット目標5のプロジェクトチームでは、食料の増産と地球環境の保全を両立した農業を実現するために、「生産力の向上」と「環境負荷や食品ロス問題の解決」の両立を目指して8つのプロジェクトを推進しています。

 

研究テーマ【食料供給の拡大と地球環境の保全を両立する】
① サイバーフィジカルシステムを利用した作物強靭化による食料リスクゼロの実現

劣悪な環境でも生育できる野生植物等の「強靭さ」のメカニズムを解明し、環境ストレス下でも栽培できる強靭な作物を迅速に開発するデジタル作物デザイン技術の確立を目指しています。

 

② 土壌微生物叢アトラスに基づいた環境制御による循環型協生農業プラットフォーム構築

植物栽培土壌および土壌に生息する微生物叢に着目し、ビッグデータを用いた解析で「健康な土壌とはなにか」の定義づけを目指しています。

 

③ 藻類と動物細胞を用いたサーキュラーセルカルチャーによるバイオエコノミカルな培養食料生産システム
動植物の最小構成要素である細胞を培養し、それらの細胞から食料を創る「培養食料生産システム」の開発を目指しています。

 

④ 先端的な物理手法と未利用の生物機能を駆使した害虫被害ゼロ農業の実現
青色レーザー光による殺虫技術、新たな天敵系統の育種など、化学農薬に依存しない害虫防除技術体系を開発し、消費者・生産者・環境すべてにやさしい持続的な農業体系を目指しています。

 

⑤ 牛ルーメンマイクロバイオーム完全制御によるメタン80%削減に向けた新たな家畜生産システムの実現
牛の第一胃に共生する微生物群(マイクロバイオーム)機能の最適化・完全制御をはかることで、2050年までに牛の消化管発酵で生じるメタンガスを80%削減し、乳肉生産効率の向上と地球温暖化防止を目指しています。

 

研究テーマ【食品ロス0を目指す消費システムを開発する】
① 地球規模の食料問題の解決と人類の宇宙進出に向けた昆虫が支える循環型食料生産システムの開発

農作物残渣・食品廃棄物を有用タンパク質に転換できる昆虫を開発し、高品質な食用・飼料用昆虫を持続的に大量生産できる体制の確立を目指しています。

 

② 自然資本主義社会を基盤とする次世代型食料供給産業の創出
科学的エビデンスに基づいた「食から健康」を実現するために必要な基盤技術『AI Nutrition技術』を確立し、ゆくゆくは健康寿命の延伸に資する「未来型食品」の開発を目指しています。

 

③ 低温凍結粉砕含水ゲル粉末による食品の革新的長期保存技術の開発
※研究概要は現在未公開

 


 

ムーンショット目標5では、農業関係者と深い結び付きのある「みどりの食料システム戦略」にも通ずる、持続可能な食料システムを開発するための壮大なプロジェクトが始まっています。
ムーンショット型研究開発事業の詳細は、内閣府ホームページをご確認ください。