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第43話・ヘソディム成功事例の紹介 vol.2(静岡県編)~圃場診断システム推進機構・對馬理事長の「ヘソディムの話」

前回は第2弾となるヘソディム成功事例紹介の前編として、長野県の事例を紹介しました。
後編となる今回は、静岡県の取り組みを紹介したいと思います。

 前編(長野県編)はこちら >>> ヘソディムの話・第42話

 

ヘソディム成功事例 (情報提供:静岡県農業試験場 伊代住浩幸氏)

 Ⅰ.JA遠州中央管内の生産圃場における取り組み 

1)対象とする農業者
・対象農家:JA遠州中央管内にほぼ全域
・対象作物:ネギ
・対象病害:黒腐菌核病
・面積:約70ha

 

2)取り組みの内容

<a>ヘソディム活用:
発病ポテンシャルのレベルを考慮した防除対策を実施した。

<b>教育・指導:
過去6年間、研修会形式で、病気の特性とそれに基づくヘソディムマニュアルの活用法を指導した。

 

3)取り組みの成果

<a>同病害対策で行っていた土壌消毒がなくなった。

<b>過去、全面的に発生し、防除に力を入れている根深ネギ主産地のJA管内において、現在は、土壌消毒なしで定植時からの殺菌剤防除フルコースをモデルとして生産者に提示している。その結果、発生はほぼ認められなくなった(JA聞き取りによる)。
発生収束後の省力防除への移行は、現場に再発への警戒もあり進められていない。

<c>HeSo+活用状況:
販売初年度の2022年度、契約した5アカウントを、ネギ黒菌以外も含め、現地圃場試験での試用を検討している。指導者不足等もあり、まだ十分活用できていないのが今後の課題である。

 

4)今後の課題:
特に、在ほ期間が長い根深ネギについては、低温期に発症する黒腐菌核病と高温期に発症する萎凋病、白絹病、軟腐病(含む他細菌性腐敗)等の土壌病害を矛盾なくコントロールする方法論とその検証が必要である。

 

 

Ⅱ.長野県、静岡県で成功した理由 

前回紹介した長野県のブロッコリー根こぶ病、そして今回紹介した静岡県のネギ黒腐菌核病ともみ成功事例が出始めています。
その成功した理由を、ここで私なりに整理したいと思います。

 

1)関係者の熱意と連携
三重県(本コラム第35、36話)と群馬県(同第37、38話)と同様に、試験場、JA、普及関係者および生産者の思いと連携が最も大きく影響しているように感じます。ヘソディムは、一次予防重視ですので、チームの中に、従来の考え方(二次予防重視)、慣習から離れられない方が多い場合にはなかなか成功しないと思います。今回の成功は、その点を関係者が共通の認識を持って乗り越えたことによると考えます。

 

2)目的にあった最適な実行可能な仕組み作り
長野県の藤永氏が述べているように、「地域や圃場の状況に応じた実行できる仕組み」をそれぞれの担当者が工夫していることが成功した2つ目の理由だと考えます。言い換えると、「観察」に基づき、最適な仮説を立て、検証しているからこそ、このような成果が出せるのではないでしょうか。科学的アプローチの成果だと考えています。

 

これからも、成果が出てきたら、紹介させていただきます。


 

■執筆者プロフィール
特定非営利活動法人 圃場診断システム推進機構
理事長 對馬誠也(つしま せいや)

1978年 北海道大学農学部農業生物学科卒業
1980年 北海道大学大学院修士課程 修了
1995年 博士号授与(北海道大学) 「イネもみ枯細菌病の生態と防除に関する研究」
1980年 農林水産省九州農業試験場病害第一研究室
1991年 農林水産省農業環境技術研究所微生物管理科
1995年 農林水産省東北農業試験場総合研究第3チーム
2000年 農林水産省農業環境技術研究所微生物管理科
2001年 独立行政法人農業環境技術研究所農業環境インベントリーセンター微生物分類研究室室長
2007年 独立行政法人農業環境技術研究所生物生態機能研究領域長
2009年 独立行政法人農業環境技術研究所農業環境インベントリーセンター長(2015年退職)
2015年 非営利活動法人活動法人圃場診断システム推進機構理事長
2017年 東京農業大学生命科学部分子微生物学科植物共生微生物学研究室 教授(2022年退職)

2022年 NPO法人圃場システム推進機構内にHeSoDiM-AI普及推進協議会を設立(代表)

現在に至る