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第41話・2023年度のヘソディムに関する話題~圃場診断システム推進機構・對馬理事長の「ヘソディムの話」
最近は講習会のご案内ばかりしていたのですが、今回は2023年度のヘソディムを取り巻く状況について報告します。これらの情報を通して、少しでもヘソディムへの理解を深めていただけたら幸いです。
1.ヘソディムが日本植物病理学会賞受賞
わたしと一緒に『ヘソディム(健康診断に基づく土壌病害管理)』を提案し(Tsushima & Yoshida, 2012)、ヘソディム関連事業のリーダーとして県や企業、生産者と実証試験等に長きにわたり取り組んできた農研機構の吉田重信氏が、日本植物病理学会賞を受賞しました。
どんな研究も、仮説の提案だけでは学会で評価されません。仮説の検証が必要です。ヘソディムも一つの仮説ですが、新しい土壌病害管理法(方法論)ですので、通常の研究(発見型研究や技術開発等)とは異なり、有効性の検証は短期間や少人数でできるものではありません。今回の受賞は、約10年間にわたり、のべ数百人に及ぶと思われる全国の県の方々、生産者、農業関係者等によって各地で検証がなされたことが評価されたもので、地道な研究が評価されたという意味でも意義があると考えています。
また、防除法という考え方(新概念)の提案は、伊藤誠哉氏の「総合防除」以来90年ぶりであると思います。100年を超える日本植物病理学会の歴史上、このような新概念(方法論)が評価された意義も大きいと考えています。これからも、このような概念の提案や、概念の拡張(例:ヘソディム的pest管理等)を議論できる環境ができたらと考えます。
なお、ヘソディムの検証に終わりはありません。今後もヘソディム(仮説)について、何十年もかけて、全国、あるいは世界各地で、様々な土壌環境、栽培環境、さらには「作物と病害の組み合わせ」の中で『有効性の検証』をしていただけたらと考えます。
2.植物防疫法が改正され、「発生の予防」(一次予防)が明記された
2022年5月2日に植物防疫法の一部を改正する法律が公布され、2023年4月1日から施行されました。
この改正でとくに注目したいのは、『改正の中に「発生の予防」が追加された』ことです。具体的に示すと、同法第1条「・・・動植物を駆除し・・・」の部分が、「・・・動植物の発生を予防し、これを駆除し・・・」となり、「発生の予防」が明記されました。
【 注目すべき点 】
「ヘソディムの話」で、ヘソディムの特徴は『一次予防重視』で、従来から行われている防除法(カレンダー防除)は『二次予防重視』であることをお話してきました。今回の改正で、従来の二次予防中心(早期発見、まん延防止)に加え、『発生の予防』(一次予防)が追加されたことは大きな意義があります。ヘソディム(一次予防重視)の普及にとって追い風になると考えるからです。全国で一次予防重視の病害管理が進むと同時に、今まで以上にヘソディムによる土壌病害管理が進むことを期待したいと思います。
3.ヘソディムがFAO(国連食糧農業機関)に紹介される
農研機構の野口雅子氏(前述の吉田グループでヘソディムに取り組んでいます)が、FAOの事務局次長にヘソディムを紹介したとの情報をいただきました。
参考URL: https://www.naro.go.jp/introduction/iro/visitors/160794.html
今回のFAOへの紹介は、次の2つの理由からとても意義があると考えています。
1つ目は、農研機構が「イノベーション」であるヘソディムを「農研機構の成果」として国際機関に紹介してくれたことです。ヘソディムの10年間の取り組みが評価されていることを感じました。
2つ目は、FAOにヘソディムが知られたことです。その理由は、病害虫分野なら知らない人がいない「IPM(総合的有害動植物管理)」を世界に普及させたのがFAOだからです。IPMの原点はカルフォルニア大学バークレー校の研究者が1959年に発表した「総合防除」(Integrated Control)の論文ですが、それを基に多くの議論がなされ、10年後にFAOがIPM(Integrated Pest Management)の用語と定義を示して普及推進をしました。そして、50年以上が経過した今では、世界各地でIPMが使われています。IPMの概念にはない、『日本独自の健康診断』と『既存の土壌病害管理』の『融合』であるヘソディムの提案者としては、FAOに知ってもらうことは世界への普及に向けて大きな意義があると考えます。これまでの経験からも、二次予防重視のシステムより一次予防重視のシステム(ヘソディム)の方が『持続的農業の推進』に役立つと考えています。国内だけでなく、いつの日か、世界のどこかで生産者や指導者が『圃場の健康診断』をしているのを期待したいと思います。
4.ヘソディム指導員3級が45名になる
2022年度にNPO法人圃場診断システム推進機構で立ち上げた『ヘソディム指導員の資格認定試験制度』に関して、2022年からヘソディム指導員3級を目指す方に向けて講義と試験を実施してきました。その結果、現在までに全国で45名の方が指導員3級に認定されました。指導員は大学生、農業者、企業の方、研究者、大学の教員など多様です。ヘソディムの普及にあたっては、指導員3級の方が中心になり、全国各地で生産者と一緒になって土壌病害管理を推進していくことを考えています。2024年2月から3月にかけても、ヘソディム講習会(指導員3級認定試験付)を予定していますので、興味のある方はぜひご参加ください。
● 詳細はこちらをご覧ください。
5.NPO法人圃場診断システム推進機構のホームページで『ヘソプラス』販売
2022年4月から、NPO法人内に設立した協議会ではヘソディム支援アプリ『ヘソプラス』を販売しています。
アプリに圃場を登録して、圃場の健康状況を青(レベル1)、黄(レベル2)、赤(レベル3)と一目で確認することができます。1圃場、2圃場の管理ではあまり実感がわかないと思いますが、圃場数が50、100と多くなるほど圃場の管理は難しくなりますので、ヘソプラスを使うメリットが出てくると思います。購入内容からの推定ではありますが、2022年度だけで、全国で最大約1200圃場が管理されていると思われます。ぜひ、一度ご利用ください。
● ヘソプラスの詳細はこちらをご覧ください。
6.NPO法人で『ブログ』を発信
最後に、ヘソディムで病害の情報やITの情報を知りたい方や広く学習したい方に向けて、わたしたちが行っているNPO法人の紹介もさせていただきます。現在、ホームページ上で会員による4つの『ブログ』を公開しています。
内容は以下の病害防除/分類関係、気象関係、IT/AI関連です。
現在もさらに新たなブログを企画しています。2022年に当NPO法人が人材育成のために立ち上げた『リカレント塾』と連動するもので、NPO法人の会員の経験等をわかりやすく解説しています。農業関係者、起業を目指す方、社会に出て再度学習したいと思われている方などにぜひご覧いただきたい内容です。
■執筆者プロフィール
特定非営利活動法人 圃場診断システム推進機構
理事長 對馬誠也(つしま せいや)
1978年 北海道大学農学部農業生物学科卒業
1980年 北海道大学大学院修士課程 修了
1995年 博士号授与(北海道大学) 「イネもみ枯細菌病の生態と防除に関する研究」
1980年 農林水産省九州農業試験場病害第一研究室
1991年 農林水産省農業環境技術研究所微生物管理科
1995年 農林水産省東北農業試験場総合研究第3チーム
2000年 農林水産省農業環境技術研究所微生物管理科
2001年 独立行政法人農業環境技術研究所農業環境インベントリーセンター微生物分類研究室室長
2007年 独立行政法人農業環境技術研究所生物生態機能研究領域長
2009年 独立行政法人農業環境技術研究所農業環境インベントリーセンター長(2015年退職)
2015年 非営利活動法人活動法人圃場診断システム推進機構理事長
2017年 東京農業大学生命科学部分子微生物学科植物共生微生物学研究室 教授(2022年退職)
2022年 NPO法人圃場システム推進機構内にHeSoDiM-AI普及推進協議会を設立(代表)
現在に至る