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第4話・ジャガイモの黒あざ病
〜農学博士・児玉不二雄の植物の病気の話
《 塊茎-カイケイ- 》
人間は植物の葉・根・果実などを食べます。ジャガイモとして食べる部分は、塊茎といいます。茎がふくらんでこぶ状(塊)になったのです。塊茎の表面についているのが菌核です(写真1)。黒っぽい褐色をしていて、イモの表面にあざ(痣)ができたようです。病気の名前はこの症状に由来します。
塊茎は人間の食用にもなるのですが、種イモにもなります。食べられてしまうとそれでおしまいですが、土に植えられると、ジャガイモの一生が始まります。
写真1 塊茎に密着した菌核と新芽が出たところ。発病し、もう新芽の先端が褐変している
《 さまざまな病徴 》
種イモは土中で芽を出します。地上に顔を見せることを萌ほ う芽が といいます。語感が良いですね。一方、土の中では根の他にストロン(茎)ができ、その先がふくらんで塊茎になります。
さて、あの菌核はどうしたのでしょうか。菌核から芽を出したカビは、ピッタリとジャガイモについてまわります。萌芽期の芽を侵し、ストロンを発病させ、最後には塊茎にしがみつくのです。(写真2、3、4、5)この病気にかかると、塊茎が大きくなれません。
写真2 新芽の発病。もう新芽の先端が褐変している
写真4 茎の地上部にまで白いカビがはい上がってきている
写真3 若い茎(土に埋もれた部分)の周囲に病斑
写真5 左側は病気にかかった株にできた、右側は健全株にできた新イモ。菌核がつき、塊茎も小さい
《 病原菌・伝染源 》
Rhizoctonia solani(リゾクトニア・ソラニ)というカビ(写真6)です。このカビは土中で生きのびるために菌核(カビのかたまり)をつくるのです。菌核は塊茎から離れて土中から直接感染することもできます。これを土壌伝染といいます。塊茎にしがみついた菌核の方は、種イモ伝染ということになります。
写真6 純粋培養した病原菌。右側では白いカビが見える。褐色や黒い塊が菌核
今回のキーワード:塊茎、土壌伝染、種イモ伝染
■執筆者プロフィール
児玉不二雄
Fujio Kodama
農学博士・(一社)北海道植物防疫協会常務理事。北海道大学大学院卒業後、道内各地の農業試験場で研究を続け、中央農業試験場病理科長、同病虫部長、北見農業試験場長を歴任。2000〜2014年まで北海道植物防疫協会会長を務める。
45年以上にわたって、北海道の主要農産物における病害虫の生態解明に力を尽くし、防除に役立てている植物病理のスペシャリスト。何よりもフィールドワークを大切にし、夏から秋は精力的に畑を回る。調査研究の原動力は、“飽くなき探究心”。
※本コラムの内容は、2009年よりサングリン太陽園ホームページ 「太陽と水と土 」に連載しているコラムを加筆・修正したものです
※特別の記載がない限り、掲載写真は著者提供もしくは「北海道病害虫防除提要(第6版)」からの借用によるものです