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第32話・ジャガイモの夏疫病(ナツエキ・ビョウ) 前編
〜農学博士・児玉不二雄の植物の病気の話

地球温暖化の影響が、植物の病気の発生にも現れています。ここ数年来、北海道で多発しているジャガイモの夏疫病は、その代表例といえるでしょう。この病気は、ジャガイモの常発病害ですが、1970年代の前半に道南および道央地方の一部で多発して、注目された程度でした。それが最近、道内各地で頻発し被害も増えてきているのです(写真1)。

▲写真1 畑での発生状況

 


 

《 病 徴 》

葉に暗褐色~黒褐色の小斑点を生じるのが初期の病徴です。これが拡大して4~5mmの円形の斑点になります。この斑点の周りに、同心円状の輪ができます。輪紋病斑といいます。病斑の裏側には、黒くて細い綿毛状のカビが見られます。7月中旬頃に下葉に発生し、しだいに上葉に及びます(写真2、3、4)。8月中旬頃からまん延するとされていましたが、昨年は7月下旬には発生の激しい畑が各地で見られました。病斑が大型化して密生すると、ジャガイモ全体が著しく黄化し、枯死して落葉しやすくなります。最近では、この発病経過が2週間くらい早まっているようです。ごくまれに、塊茎(カイケイ)、つまりジャガイモの食用部分の表面に、直径数mm~1cm程度の円形~雲形の灰黒色の凹んだ病斑を生じます。

 

▲写真2 下葉から病斑が拡大しています

 

▲写真3 初期の夏疫病の病斑です。小さな斑点です

 

▲写真4 典型的な輪紋病斑です

 


 

《 伝染経路と発生環境 》

夏疫病の伝染源は、罹病したジャガイモの枯れ込んだ茎や葉(これを被害残渣〈ヒガイザンサ〉といいます)の中に潜んで越冬した病原菌の、菌糸または分生子です。発病適温は26℃前後です。ジャガイモが老化したり、肥料不足などで植物体の活性が低下したりすると多発しやすくなります。また、連作すると発生が6月中~下旬と早まり、被害も大きくなります。

次回は病原菌や寄生範囲について解説します。

 


 

今回のキーワード:温暖化

 

■執筆者プロフィール

児玉不二雄 Fujio Kodama

農学博士。北海道大学大学院卒業後、道内各地の農業試験場で研究を続け、中央農業試験場病理科長、同病虫部長、北見農業試験場長を歴任。その後、北海道植物防疫協会にて、会長理事等を務めた。

45年以上にわたって、北海道の主要農産物における病害虫の生態解明に力を尽くし、防除に役立てている植物病理のスペシャリスト。何よりもフィールドワークを大切にし、夏から秋は精力的に畑を回る。調査研究の原動力は、“飽くなき探究心”。

 

※本コラムの内容は、2009年よりサングリン太陽園ホームページ 「太陽と水と土」に連載しているコラムを加筆・修正したものです