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第9話・キュウリの黒星病
〜農学博士・児玉不二雄の植物の病気の話

作物には「持病」があります。キュウリでは「黒星病(くろぼしびょう)」がそれにあたります。
持病、つまりもっともかかりやすい病気なのですが、それほど頻繁に目にするものではありません。農家はこの病気を丁寧に防除しているからです。でも手抜きをすると大発生して、大きな被害をもたらします。

 


 

《 病徴 》

キュウリの苗はハウスでつくりますが、その苗の時代から話を始めます。

ポツンと小さな褐色の斑点ができます。それから、その周りに脱色したリングができ、斑点はだんだん大きくなります(写真1)。このリングはハロー(halo:後述)といい、植物の病気でよく出てくる大切な症状です。キュウリが大きくなるにしたがって、茎や果実にも症状が出てきます(写真2)。茎に盛り上がったカビがついているのは病原菌です。果実つまり食用部分ですが、ここに症状が現れるのがもっと困ります。商品価値を失ってしまうからです。ヤニが吹き出し、最後に黒っぽいカビがつきます(写真3)。

写真1 キュウリの黒星病:葉の症状、苗

 

写真2 キュウリの黒星病:茎の症状、胞子の塊

 

写真3 キュウリの黒星病:果実の症状、「ヤニ」に注目


 

《 病原菌と病名 》

Cladosporium cucumerinum(クラドスポリウム・ククメリナム)というカビが病原菌です。クラドスポリウムは黒っぽいカビのグループを指し、ククメリナムはウリ類です。とすると―――。賢明な読者はもうお気づきでしょう。このカビは他のウリ類でも病気を起こします。メロンの黒星病、カボチャの黒星病などがあるのです(写真4、5)。 ちなみにメロンは北海道で初めて、カボチャは日本で初めて、児玉が発見・報告しました。病斑上に盛り上がったカビは病原菌の胞子です。米粒状の胞子がびっしり詰まっています。この胞子の形はクラドスポリウムの特徴ですので、記憶しておいてください(写真6、7)。

写真4 メロンの黒星病:葉の症状

 

写真5 カボチャの黒星病:果実の症状

 

写真6 純粋培養中の病原菌

 

写真7 病原菌の胞子


 

《 防除法など 》

種子も保菌していることがあるので種子消毒が必要です。茎葉や果実の防除には、早めの薬剤散布が大切です。病原菌が植物体に付着しても、体内に侵入できないように防護膜を張るのです。カビの繁殖は高温・多湿と思われていますが、比較的低温を好みます。北海道では発生しやすい病気なのです。

 


 

《 ハローについて 》

ハローは植物の病徴(第1話参照)の代表例です。インゲンマメにはそのものズバリの病気があります。英名は「halo blight」。haloは太陽の周りや目の周りにできるカサやクマ(暈)のことです。日本語の病名は「かさ枯病」。昔は「暈枯病」と書きました。カビより一回り小さい微生物、バクテリアが起こす病気です。次回はその話をすることにしましょう。

 


 

今回のキーワード:ハロー

 

■執筆者プロフィール

児玉不二雄 Fujio Kodama

農学博士・(一社)北海道植物防疫協会常務理事。北海道大学大学院卒業後、道内各地の農業試験場で研究を続け、中央農業試験場病理科長、同病虫部長、北見農業試験場長を歴任。2000〜2014年まで北海道植物防疫協会会長を務める。

45年以上にわたって、北海道の主要農産物における病害虫の生態解明に力を尽くし、防除に役立てている植物病理のスペシャリスト。何よりもフィールドワークを大切にし、夏から秋は精力的に畑を回る。調査研究の原動力は、“飽くなき探究心”。

 

※本コラムの内容は、2009年よりサングリン太陽園ホームページ 「太陽と水と土 」に連載しているコラムを加筆・修正したものです
※特別の記載がない限り、掲載写真は著者提供もしくは「北海道病害虫防除提要(第6版)」からの借用によるものです