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第51話・キャベツ根こぶ病マニュアル(熊本県版)の紹介②~圃場診断システム推進機構・對馬理事長の「ヘソディムの話」
第50話に引き続き、熊本県のキャベツ根こぶ病マニュアルについてご紹介します。
④ 発病リスクの評価
下記の図4のとおり、3項目を総合的に評価して、総合評価を3段階(発病リスク小、中、大)としています。ヘソディムでは通常レベル1~3を使いますが、ここでは小、中、大としています。表現は違いますが、ヘソディムの定義の条件2(発病ポテンシャルで3段階に評価)を満たしています。
図4 評価法
⑤ 対策
対策は、表1に示すように、耕種的防除、薬剤防除、ほ場衛生の3種に分けて、それぞれ発病リスクの小、中、大に応じた対策を記しています。対策も「必須」と「推奨」に分けているのも特徴です。たとえば、リスク小では、「必須」として「排水対策」、「セルトレイ灌注」があり、「推奨」として「土壌pHの矯正」、ほ場衛生として「長靴、農業機械の洗浄、発病株の抜き取り」があります。
さらに、推奨する対策として、「土壌pHの矯正」、「おとり植物の作付け」、「ほ場衛生」について、特別に詳しい説明があります。この3点を重視していると思います。
表1 対策
⑥ その他
マニュアルの後半では、以下の補足があります。
ア)補足1:根こぶ病とは
病害の病徴、伝染方法、発生の特徴について丁寧な説明があります。
イ)補足2:防除技術
①ほ場の排水対策、②土壌pHの矯正、③薬剤防除、④抵抗性品種の利用、⑤低温短日期の栽培、⑥おとり植物の作付け、⑦長靴や農業機械の洗浄、ほ場作業順番の順守、⑧発病株の抜き取り、速やかに片付けについて丁寧な解説がなされています。まさにヘソディムが目指す、一次予防重視で病気の発生を防ぐとともに、発生した場合には、病原菌密度を少しでも下げて蔓延を防ぐための技術が推奨されていると思います。
ウ)補足3:ヘソディム支援AIアプリ「HeSo+(ヘソプラス)」の紹介
ヘソディムマニュアルでAIアプリ「HeSo+(ヘソプラス)」が紹介された初めての例と言えます。
⑦ 作成にあたってとくに注意したことや、難しかったこと(情報提供者、坂本氏より)
情報提供者で、作成にかかわった坂本氏から、栽培環境等が多様な圃場に対応するマニュアルを作る難しさについて情報をいただきました。実際に生産者・指導者が圃場毎に対策を講ずる場合にとても重要だと思いますので、紹介します。
「ヘソディムマニュアルを作成するにあたって難しかった点は診断項目の選定です。診断項目の選定では菌密度や土壌pHがかかわることは調査結果から想定されましたが、それがあてはまらないほ場(菌密度が高いのに発病が少ない)があり、聞き取り調査やAIによる発病と関連のある項目などから、ほ場の土壌理化学性や物理性、生産者の栽培技術力(栽培管理法や施肥法)が関連していると思われました。しかし、具体的な診断項目まで決定できませんでしたので、ほ場の発病履歴という項目にしました。」(坂本氏)
また、坂本氏からは、普及のためには、土壌菌密度を測定するためのコストが普及に影響するので、できたら、コストがかからない方法(セルトレイ法※など)の検討も必要だとのことでした。
※セルトレイ法:本シリーズでは三重県マニュアル等で紹介しています。
⑧ 最後に
本マニュアルの特徴は、これまでの根こぶ病のマニュアル情報と自ら熊本県内で収集した多くのデータを基に、「低コスト」で、「地域に最適な」診断・評価・対策を策定したものと考えることができます。今後、ヘソディム指導員や生産者が圃場毎に管理する際には、この熊本版を基に、HeSo+を活用しながら、「圃場毎のマニュアル」を作ることになりますが、その際にも本マニュアルの個々の項目(診断項目、対策技術)に対する丁寧な解説がとても役立つと考えます。是非、利用していただけたらと思います。
【参考文献】
発病診断リスクに基づく「キャベツ根こぶ病」防除マニュアル(冬春キャベツ):熊本県農業研究センター生産環境研究所、 6.
https://www.pref.kumamoto.jp/uploaded/attachment/224196.pdf
■執筆者プロフィール
特定非営利活動法人 圃場診断システム推進機構
理事長 對馬誠也(つしま せいや)
1978年 北海道大学農学部農業生物学科卒業
1980年 北海道大学大学院修士課程 修了
1995年 博士号授与(北海道大学) 「イネもみ枯細菌病の生態と防除に関する研究」
1980年 農林水産省九州農業試験場病害第一研究室
1991年 農林水産省農業環境技術研究所微生物管理科
1995年 農林水産省東北農業試験場総合研究第3チーム
2000年 農林水産省農業環境技術研究所微生物管理科
2001年 独立行政法人農業環境技術研究所農業環境インベントリーセンター微生物分類研究室室長
2007年 独立行政法人農業環境技術研究所生物生態機能研究領域長
2009年 独立行政法人農業環境技術研究所農業環境インベントリーセンター長(2015年退職)
2015年 非営利活動法人活動法人圃場診断システム推進機構理事長
2017年 東京農業大学生命科学部分子微生物学科植物共生微生物学研究室 教授(2022年退職)
2022年 NPO法人圃場システム推進機構内にHeSoDiM-AI普及推進協議会を設立(代表)
現在に至る