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第50話・キャベツ根こぶ病マニュアル(熊本県版)の紹介①~圃場診断システム推進機構・對馬理事長の「ヘソディムの話」
第46話では、神奈川県が最近作成した「キャベツ根こぶ病マニュアル」(以下、神奈川県版)をご紹介しました。今回は、同様にキャベツ根ぶこ病について作成された熊本県のヘソディムマニュアル(以下、熊本県版)を紹介します。
キャベツ根こぶ病のヘソディムマニュアルは、三重県が作成したもの(以下、三重県版、第5話参照)もありますので、本シリーズでの紹介例としては、熊本版は3つ目のマニュアルになります。ただし、神奈川版は「夏まきキャベツ」を対象としたのに対して、熊本版は「冬春キャベツ」を対象にしており、診断・評価・対策の内容は対象作物の栽培条件等によって異なります。ヘソディムは、地域の生産者の状況やマニュアル作成者の考え方によって内容が異なりますので、複数のマニュアルを比較しながら、自分たちの地域でのキャベツ根こぶ病に対応していただけたらと思います。
なおこのマニュアルは、神奈川版と同様に、ヘソディムの普及を目指す、農林研究推進事業委託プロジェクト研究「人工知能未来農業創造プロジェクト(AIを活用した土壌病害診断技術の開発)」で作られたものです。
1. キャベツ根こぶ病マニュアル(作成:熊本県農業研究センター)の紹介
(情報提供:元熊本県農業研究センター、現熊本県庁農業技術課 坂本美沙氏)
マニュアル等から抜粋して紹介します。
① 概要
熊本県では、平坦地域で水田裏作に冬春キャベツ等のアブラナ科野菜が生産されていますが、連作や排水不良となりやすい水田地帯で「根こぶ病」が問題になっています。「根こぶ病」は発病後の防除が困難なため、作付け前の防除が重要である として取り組んでいますが、現地ほ場では防除対策の不足で収量減となる被害が発生しているとあります。その一方で、被害を懸念し過剰防除を行っているほ場もあるとのことです。
そこで、2017年からの5か年間、冬春キャベツ産地の八代地域において、根こぶ 病の発病実態と有効な防除対策について調査を行い、『発病リスク診断に基づく防除マニュアル』を作成しています。
② 発病リスク診断に基づく防除マニュアルの説明
「根こぶ病は発病後の防除が困難」なことから、対策として「ほ場ごとに発病リスクを診断して、発病リスク に応じた防除技術を選定し、対策を実施します。」と、最初に防除の方針をわかりやすく解説しています。その上で、「発病のしやすさを予測して、事前に対策を立てるやり方をヘソディム「健康診断に基づく土壌病 害管理」といいます。」と、ヘソディムの紹介があり、防除マニュアルの流れを「ステップ1:診断」、「ステップ2:リスクの評価」、「ステップ3:リスクに応じた対策」として示しています。(図1)
図1 防除の流れ
③ マニュアルの診断
診断項目は、診断項目1「土壌中菌密度」、診断項目2「土壌pH」、診断項目3「発病履歴」の3項目となっています。診断項目を最小限にしている点はこのマニュアルの特徴だと思います。ヘソディムは一次予防が中心の管理法ですので、「診断」ではできるだけ、低コストで大まかに圃場の状況を把握できればよいと考えているからです。神奈川版では土壌菌密度が診断項目に入っていませんでしたので、地域によってマニュアルの内容は異なることを理解しておくことが重要です。
ア)診断項目1(土壌中菌密度)
データ(図2)を付けて、病原菌密度と発病の関係を示しています。その上で、土壌中の病原菌密度に応じて、1点、3点、5点を付けています。
イ)診断項目2(土壌pH)
ここでは、pH7.0を基準にして、それ以上ではー2点、以下では0点としている点は本マニュアルの特徴といえます。
ウ)診断項目3(発病履歴)
一次予防重視のヘソディムでは発病履歴を重視している病害が多いのですが、データに基づいて診断項目にしている例はあまり多くありません。その点、熊本版では、全233地点のデータを基に、発病履歴の内容に応じて、リスク値1点、2点、3点としています(図3)。
地域のデータが多い場合に、診断項目の重要性と評価についての説得力が増すことは明らかです。発病履歴に関して、生産者の記憶のたどるのではなく、多くのデータに基づいて診断・評価している点も本マニュアルの特徴ということができると思います。
次回は、発病リスクの評価方法や対策等についてご紹介いたします。
■執筆者プロフィール
特定非営利活動法人 圃場診断システム推進機構
理事長 對馬誠也(つしま せいや)
1978年 北海道大学農学部農業生物学科卒業
1980年 北海道大学大学院修士課程 修了
1995年 博士号授与(北海道大学) 「イネもみ枯細菌病の生態と防除に関する研究」
1980年 農林水産省九州農業試験場病害第一研究室
1991年 農林水産省農業環境技術研究所微生物管理科
1995年 農林水産省東北農業試験場総合研究第3チーム
2000年 農林水産省農業環境技術研究所微生物管理科
2001年 独立行政法人農業環境技術研究所農業環境インベントリーセンター微生物分類研究室室長
2007年 独立行政法人農業環境技術研究所生物生態機能研究領域長
2009年 独立行政法人農業環境技術研究所農業環境インベントリーセンター長(2015年退職)
2015年 非営利活動法人活動法人圃場診断システム推進機構理事長
2017年 東京農業大学生命科学部分子微生物学科植物共生微生物学研究室 教授(2022年退職)
2022年 NPO法人圃場システム推進機構内にHeSoDiM-AI普及推進協議会を設立(代表)
現在に至る