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30年後の農業の姿を見据えた「みどりの食料システム戦略」とは

農林水産省は5月12日、農業の環境負荷低減と生産基盤の強化を目指す政策方針「みどりの食料システム戦略」を策定しました。生産力を高めながら持続可能な農業などを実現するため、生産資材の調達から生産、加工・流通、消費までのサプライチェーン全体を通じて環境負荷の軽減などを推進する方針です。2050年までの数値目標を定め、研究開発や普及をすすめる技術の工程表を発表しました。

このたび策定された「みどりの食料システム戦略」とはどのようなものなのでしょうか。詳しくご説明します。

 

 


 

 

策定の背景と目的

 

近年、日本の食料・農林水産業は、大規模自然災害や地球温暖化、生産者の減少などによる生産基盤の脆弱化や地域コミュニティの衰退、新型コロナウイルスを契機とした生産と消費の変化などの課題に直面しています。

また、SDGsや環境を重視する国内外の動きが加速していくなか、欧米諸国における対応を受け、持続可能な食料システムを構築していくことが急務となっていました。

こうした背景から、災害や温暖化に強く生産者の減少やポストコロナも見据えた農林水産行政を推進していくことで、将来にわたって食料の安定供給を図るため「みどりの食料システム戦略」が策定されました。

 

 

戦略の概略

 

戦略には、2050年までの中長期の工程表、2030年度までの当面の期間の工程表が具体的な取り組みや数値目標とともに盛り込まれました。農業に関係する項目で、2050年までに目指す姿として挙げられているのは以下の4項目です。

 

① 農林水産業のCO2排出量の実質ゼロ化

② 有機農業を全農地の25%(100万ha)へ拡大

③ 化学農薬の使用量半減

④ 化学肥料の使用量30%減

 

項目ごとに具体的な取り組み内容と目標を整理します。

 

 

① 農林水産業のCO2排出量の実質ゼロ化 へ向けて

地球温暖化対策として、これまでの化石燃料に依存した園芸から脱却するための目標と、その達成に向け開発を目指す技術などがまとめられました。

 

 

 

 

② 有機農業を全農地の25%(100万ha)へ拡大 へ向けて

現在の日本における有機農業の面積は2万3700 ha(2018年)にとどまっていますが、2050年までに有機農業の取り組み面積の割合を国際水準まで引き上げることを目標としています。

 

 

 

 

化学農薬の使用量半減 へ向けて

スマート防除技術体系の活用などを通じて、化学農薬のみに依存しない総合的な病害虫管理体系の確立・普及を目標としています。

 

 

 

 

④ 化学肥料の使用量30%減 へ向けて

有機物の循環利用や、施肥の効率化・スマート化を進め、化学肥料の使用量を低減させることを目標としています。

 

 

 

 

次に、これらの目標をサプライチェーンの各段階(生産資材の調達、生産、加工・流通、消費)に落とし込み、整理したものをご紹介します。

 

 

 

 

 

※ 農林水産省公表資料より

 


 

まとめ

 

今回の「みどりの食料システム戦略」は、日本の農林水産業の現状や、刻々と変化する環境に配慮し、持続可能な食料生産を目指すために策定されました。

戦略では、生産基盤の強化に向けて生産者の裾野を広げるための方針も示されました。

スマート農業技術などで農作業の生産性・安全性を高め、農作業に不慣れな方でも取り組みやすく、さまざまな方が農業に参画しやすい技術の開発も目指しています。

 

農林水産省では、2021年6月~9月を「みどりの食料システム戦略」における集中周知期間と位置づけ、補助事業の用件化や関連制度の見直しの検討などを本格化する予定となっています。

 

引き続きSAc事務局では、「みどりの食料システム戦略」をはじめ、スマート農業技術や農政について注目して参ります。

 

農林水産省HP「みどりの食料システム戦略」