- 2024年6月
- 2024年5月
- 2024年4月
- 2024年3月
- 2023年12月
- 2023年11月
- 2023年10月
- 2023年9月
- 2023年6月
- 2023年5月
- 2023年3月
- 2023年2月
- 2023年1月
- 2022年11月
- 2022年10月
- 2022年9月
- 2022年8月
- 2022年6月
- 2022年5月
- 2022年4月
- 2022年3月
- 2022年2月
- 2022年1月
- 2021年12月
- 2021年11月
- 2021年9月
- 2021年8月
- 2021年7月
- 2021年6月
- 2021年5月
- 2021年4月
- 2021年3月
- 2021年2月
- 2021年1月
- 2020年12月
- 2020年11月
- 2020年10月
- 2020年9月
- 2020年8月
- 2020年7月
- 2020年6月
- 2020年5月
- 2020年4月
- 2020年3月
- 2020年2月
- 2020年1月
- 2019年12月
- 2019年11月
- 2019年10月
- 2019年8月
- 2019年7月
- 2019年6月
- 2019年4月
- 2019年3月
- 2019年2月
- 2019年1月
自然環境の回復を促す「リジェネラティブ農業」とは
今年はヨーロッパ地方を熱波が襲うなど、日本のみならず世界各地で暑い夏となっています。本共同体の活動拠点である北海道においても今年は記録的な猛暑となり、慣れない暑さが続いています。本記事をご覧の生産者の方の中には、作物の暑さ対策により一層気を配られた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
去る8月9日、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、世界の平均気温の上昇幅が2021年~40年の間に1.5℃を超える可能性が非常に高いと発表しました。これは、従来の分析よりも温度上昇のペースが10年ほど早まっており、急速に温暖化が進行していることを示唆しています。
気候変動にともなう異常気象対策は喫緊の課題とされ、世界各地で取り組みが行われるなかで、農業の世界にも変革が求められています。
近年農業分野で注目されはじめているのが「リジェネラティブ農業」です。
アメリカでは、世界最高水準の農業基準を策定するための機関として「リジェネラティブ・オーガニック・アライアンス」が2018年に設立され、2020年には認証制度がスタートしています。
今回は、この新しいキーワードである「リジェネラティブ農業」についてご紹介いたします。
リジェネラティブ農業とは
リジェネラティブ農業(Regenerative Agriculture)は、日本語で「環境再生型農業」とも呼ばれ、農地の土壌を健康的に保つだけではなく、土壌を修復・改善しながら自然環境の回復に繋げることを目指す農業のことを指します。
着目される土壌の可能性
リジェネラティブ農業を考えるうえで重要なもののひとつに、農地における「土壌有機炭素」の存在があります。
家畜ふん堆肥、緑肥、作物残さ等の有機物を農地中にすき込むと、一部は微生物の分解によって二酸化炭素として大気中に放出されますが、一部は微生物の作用により難分解性の「土壌有機炭素」に変換され、炭素として土壌中に貯留することになります。
一般的に、土壌中に含むことのできる炭素の量は、地球全体でみると大気中の炭素の約2倍、陸域植生中の炭素の約3倍にも及ぶと言われています。土壌にすき込む有機物中の炭素は、もとはすべて大気中のCO2に由来することから、土壌中の炭素量を増やす取り組みを進めることは地球温暖化の抑制に有効であると考えられています。
このように、多くの炭素を貯留することのできる土壌の可能性に焦点を当てたリジェネラティブ農業は、自然環境に配慮した農業として注目されはじめています。家畜ふん堆肥、緑肥、作物残さ等の有機物を土壌に投入して土壌環境を整えることは、多くの炭素を土壌に貯め込むことに繋がり、同時に大気中のCO2量を減少させて自然環境を回復させる力があると期待されているのです。
リジェネラティブ農業の具体例
では、土壌中の炭素を増やす方法にはどのようなものがあるのでしょうか。
リジェネラティブ農業の具体例としては、以下のようなものが挙げられます。
○ 不耕起栽培
土を耕さずに農作物を栽培する方法のことです。
土を掘り起こさずに栽培を行うことで土壌の侵食が軽減されるため、有機物を多く含む豊かな土壌に戻り、空気中の炭素をより多く地中に留められるようになると言われています。
○ 輪作
同じ土地で異なる作物を周期的に栽培するおなじみの輪作も、土中の栄養素や微生物生態系のバランスを保ち、炭素を土壌に留めることのできる土壌を作るのに役立つとされています。
○ 被覆作物の活用
肥料として活用される緑肥作物も被覆植物の一種です。
作物の休閑期に、土壌の浸食の防止や雑草の抑制などを目的として、露出している地面を覆うように植物を植える栽培方法も、土壌中の有機物量を増やすことに有効とされています。
良い循環を生むリジェネラティブ農業の利点
リジェネラティブ農業は、土壌炭素量を増やして気候変動や地球温暖化の解決策となるだけではありません。
土壌中の有機物は、土の物理性の改善や保肥力・保水力を高めるうえで重要な要素です。
リジェネラティブ農業の推進によって土壌の有機物が増えると、雨や風による土壌侵食への耐性が増し、さらに保水力も高まることで、干ばつや台風をはじめとした災害への対策にも繋がるとも考えられています。また、土壌環境の改善により農地そのものの生産性が大きく向上するという好循環が期待されます。リジェネラティブ農業は、高品質で栄養価の高い食糧を生産することができる健康的な土壌をつくると同時に、生産性の高い農業や健全な自然環境を実現することができる可能性を持っています。
日本でも本年5月に「みどりの食料システム戦略」が策定され、持続可能な農業を目指すため「農林水産業のCO2排出量の実質ゼロ化」「有機農業を全農地の25%(100万ha)へ拡大」など30年後の農業を見据えた目標が定められました。
世界的には「リジェネラティブ農業」に取り組む大企業も複数出てきており、持続可能な農業を実現するためのひとつの方法として、日本においても今後注目されると考えられます。
●「みどりの食料システム戦略」についてはこちら