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【新シリーズ】第1話・リジェネラティブ農業(環境再生型農業)とは?
スマトーク読者の皆様、こんにちは。 Agriclue(アグリクルー)合同会社のベネディクトです。
近年、世界的に「リジェネラティブ農業(環境再生型農業)」という農法が注目を集めつつあることから、今回より本テーマについての新連載をスタートいたします。
本連載は長期的なシリーズとして、このテーマを深く掘り下げ、そのメリットや限界、そして日本への適合性について探求していきたいと考えています。まずはリジェネラティブ農業の基本的な考え方から始め、将来的には具体的な事例やインタビュー、ベストプラクティス(成功事例)なども交えてお届けする予定です。

明確な定義はないが、土壌の健康が主役
リジェネラティブ農業(リジェンアグ)には、世界共通の厳密な定義はありません。1980年代に米国のロデール研究所が提唱して以来、様々な解釈が存在してきました。しかし共通しているのは、「土壌の健康と肥沃度を強化・回復させること」を目的とするシステムアプローチであるという点です。決まったルールの集合体ではなく、農業に対するひとつの考え方として捉えるべきものだと思います。
環境保全型農業との違い
日本の農林水産省は「環境保全型農業」を、土づくり等を通じて化学肥料や農薬を低減し、環境負荷を軽減する持続的な農業と広く定義しています。一方、FAO(国連食糧農業機関)が定義する国際用語「Conservation Agriculture(保全農業)」は、最小限の土壌かく乱、30%以上の土壌被覆の維持、多様な作物の栽培を原則としています。
リジェネラティブ農業は、これらFAOの原則を内包しつつ、土壌生物の活性化を最優先とし、最終的に収量の安定や気候変動への適応を目指す、より包括的な概念です。
リジェネラティブ農業を構成する5つの原則
システム全体を機能させるには、以下の原則を組み合わせて実践することが重要です。
・最小限の土壌かく乱(耕起の削減)
・恒常的な土壌被覆(マルチや作物残渣)
・多様な作付体系(輪作の拡大)
・年間を通した生きた根の維持(カバークロップ)
・可能な範囲での家畜の統合(有機施肥による腐植形成と土壌機能の維持)
農家の視点:長期的な生産コストの削減
これらすべての原則を100%達成することが最終目的ではありません。有機栽培とは異なり、現状の市場においてリジェネラティブ農業で栽培された作物が明確に差別化されているわけではないからです。農業はビジネスであり、農家は主に長期的な生産コストの削減や利益率の維持を目的としてこれを実践しています。
例えば、近年ドイツでは、干ばつ対策として不耕起直播が注目を集めています。これは「最小限の土壌かく乱」という原則に合致しますが、農家にとっての目的はリジェネラティブ農業を達成すること自体ではなく、土壌の水分を保ち、栽培コストを削減することなのです。
米国などでは、食品企業が契約農家と独自の栽培ルールを定め、これらの手法を導入する農家へ追加対価を支払う事例も出始めています。しかし本連載では、こうした企業主導の取り組みに焦点を当てるのではなく、あくまで農家自身が自分たちの視点からリジェネラティブ農業をどう捉え、どう活用していくかについて焦点を当てていきます。
次回は、第一の原則である「土壌のかく乱を減らすこと」について、さらに詳しく掘り下げていきます。
執筆者プロフィール
ベネディクト・ライフェンラート(Benedikt Reifenrath)
Agriclue合同会社 代表
ドイツ・ボン大学農学部を卒業後、来日。2020年に京都大学大学院地球環境学舎を修了し、在日ドイツ商工会議所(東京)を経て、2025年にAgriclue(アグリクルー)合同会社を設立。日本の農業現場の課題や農家の声を直接、欧米の農業機械・資材メーカーへと届ける橋渡し役を担う。本連載では、日欧の農業事情や最新トレンドを独自の視点で発信していく。京都市在住、30歳。
メール:benedikt.reifenrath@agriclue.co.jp












