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第2話・どこまで進んでいる?ドイツのスマート農業の実態と課題

スマトーク読者の皆様、こんにちは。Agriclue(アグリクルー)代表のベネディクト・ライフェンラートです。前回は、ドイツ農業のスケールについてお話しいたしました。今回は、その広大な農地を効率的に管理するためのスマート農業の普及状況と、現場が直面する課題に迫ります。

 

世界最大の農機輸出国:ドイツのプレゼンス

まず、ドイツのスマート農業を語る上で欠かせないのが、その強固な農機産業基盤です。ドイツは、世界をリードする農業機械の輸出国でもあるのです。

(出典:European Agricultural Machinery Industry Association)

 

こちらの図にあるように、2021年のドイツの農業機械輸出額は約131億6,400万ユーロ(約2.4兆円)に達し、中国やアメリカ、フランスなどの農業大国を大きく引き離して世界第1位です。この強固な産業基盤があるからこそ、ドイツ国内の農家は最先端のスマート農業技術にアクセスしやすく、また技術開発そのものもスピーディーに進展するのです。

 

現場でのスマート農業導入率

ドイツの専業農家におけるスマート農業技術の導入率は、技術カテゴリによって大きな差があります。

(出典:Marius Michels, Jasper Twietmeyer, Oliver Musshoff (2026): Farm typologies and precision agriculture technology co-adoption in German agriculture: A combined cluster and network approach)

 

データ記録やトラクターの自動操舵といった基礎的な技術は広く浸透していますが、自律走行ロボットなどの完全無人化技術の導入はまだ始まったばかりです。

 

現場が直面する4つの壁

先進的な農業大国ドイツといえども、スマート農業の普及には以下の4つの大きな課題があります。

● 通信インフラの未整備: ネット環境が不十分であり、ネットワーク整備が普及のボトルネックになっています。

● メーカー間のデータ連携不足: 異なるメーカーの機械間でデータを共有できず、相互運用性が低いことがネックです。

● 技術の信頼性不足: 農業現場では安定性が必須ですが、現在の技術は実用面での信頼性に課題があります。

● 法的・制度的制約: 自動運転農機は公道走行ができず、圃場間の移動に制限があります。

 

産学官連携クラスターの取り組み

こうした課題を打破するため、ドイツでは「Agrotech Valley(アグロテックバレー)」と呼ばれる産学官連携のスマート農業クラスターが形成されています。多数の農機メーカーや研究機関などが集結し、次世代の農業ソリューション開発やデータ連携の向上などを共同で推進しています。

アグロテックバレーのメンバーには、クラース社やアマゾーネ社など、日本でも広く使われているメーカーも含まれています。スマート農業共同体(SAc)もアグロテックバレーと連携し、2026年から会員となっています(以下の会員リストをご覧ください)。

次回は、欧州の最先端農業機械メーカーの視点から、日本の農業現場の課題にどのような価値を提供できるのか、その可能性についてお話しします。

 

 

 

執筆者プロフィール

ベネディクト・ライフェンラート(Benedikt Reifenrath)
Agriclue合同会社 代表

 

ドイツ・ボン大学農学部を卒業後、来日。2020年に京都大学大学院地球環境学舎を修了し、在日ドイツ商工会議所(東京)を経て、2025年にAgriclue(アグリクルー)合同会社を設立。日本の農業現場の課題や農家の声を直接、欧米の農業機械・資材メーカーへと届ける橋渡し役を担う。本連載では、日欧の農業事情や最新トレンドを独自の視点で発信していく。京都市在住、30歳。
メール:benedikt.reifenrath@agriclue.co.jp