- 2024年11月
- 2024年10月
- 2024年7月
- 2024年6月
- 2024年5月
- 2024年4月
- 2024年1月
- 2023年12月
- 2023年11月
- 2023年10月
- 2023年8月
- 2023年4月
- 2022年6月
- 2022年5月
- 2022年4月
- 2022年3月
- 2022年2月
- 2022年1月
- 2021年12月
- 2021年11月
- 2021年10月
- 2021年9月
- 2021年8月
- 2021年7月
- 2021年6月
- 2021年5月
- 2021年4月
- 2021年3月
- 2021年2月
- 2021年1月
- 2020年11月
- 2020年10月
- 2020年8月
- 2020年4月
- 2020年3月
- 2020年2月
- 2020年1月
- 2019年12月
- 2019年11月
- 2019年10月
- 2019年9月
- 2019年8月
- 2019年7月
- 2019年6月
- 2019年5月
- 2019年4月
- 2019年3月
- 2019年2月
第27話・さまざまな灰色かび病〜(1)豆類の灰色かび病 前編
〜農学博士・児玉不二雄の植物の病気の話
はじめから病原菌の名前で恐縮です。Botrytis cinerea(ボトリチス・シネレア)というカビによっておきる植物の病気には、ほぼ例外なく「灰色かび病」と名前がついています。実にたくさんの作物がこの病気に罹ります。
今回は豆類の灰色かび病です。畑作物の豆類のうちでは、インゲンマメで最も発生が目立ちます。
《病徴》
主に葉、莢に発生しますが、病斑が拡大することもあります(写真1)。病原菌の分生子(カビの胞子)は、花弁(カベン:花びら)から侵入します。
まず花弁の侵入部分に、先端がやや尖った楕円形の斑点が生じ、この斑点の回りは濃い綠色になり、ついには花弁全体が褐色となり、やがて灰色のカビを生じて腐敗・落下します。莢では、最初に花弁の付着部に暗緑色水浸状の病斑を生じ、急速に拡大して腐敗し、その表面に灰色のカビが密生します。また、散った花弁が葉に付着した場合、花弁で増殖した菌が葉に侵入し、多くの場合、輪紋状の褐色病斑が見られます(写真2)。
▲写真1 インゲンマメ灰色かび病:葉の症状
▲写真2 アズキ灰色かび病:葉の症状
《伝染経路など》
病原菌は、罹病した作物の被害組織内(=枯れて死んでしまった植物体内)で、菌糸、菌核の状態で越年します。翌年、カビにとって条件が整うと(つまり温度・水分条件などが良くなると)分生子をつくり、それが飛散して開花後の老衰した花弁に感染し、そこから莢、茎葉に拡がっていきます。
開花期以降、降雨の多い低温湿潤天候が続くと、多量の分生子を形成・飛散するため多発します。また、風通しの悪い過繁茂状態になると発病が促進されます。
病原菌は冒頭に述べたように、Botrytis cinerea(ボトリチス・シネレア)というカビです。インゲンマメ、アズキ、ダイズのほか、ほとんどの豆類がこの病害に侵されます。このカビは菌核をつくりますが、キノコはつくりません。菌核から直接カビが伸び始めます。菌糸発芽、といいます。
後編では防除のポイントなどについて解説します。
■執筆者プロフィール
児玉不二雄 Fujio Kodama
農学博士・(一社)北海道植物防疫協会理事。北海道大学大学院卒業後、道内各地の農業試験場で研究を続け、中央農業試験場病理科長、同病虫部長、北見農業試験場長を歴任。2000〜2014年まで北海道植物防疫協会会長を務める。
45年以上にわたって、北海道の主要農産物における病害虫の生態解明に力を尽くし、防除に役立てている植物病理のスペシャリスト。何よりもフィールドワークを大切にし、夏から秋は精力的に畑を回る。調査研究の原動力は、“飽くなき探究心”。
※本コラムの内容は、2009年よりサングリン太陽園ホームページ 「太陽と水と土」に連載しているコラムを加筆・修正したものです
※写真:清水基滋氏、谷井昭夫氏、著者