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第2話・冬期間の新たな農業収益源となるアスパラガスの伏せ込み促成栽培技術
〜酪農学園大学・園田先生の「アスパラガスの話」
北海道のアスパラガスは全国的に好評を博している一方、作付面積と出荷量は減少を続けています。そこで、道南の檜山地方などでは、気象条件や病害の影響を受けやすい露地栽培ではなく、ビニールハウスを用いた施設栽培による産地化が図られています。この施設栽培の将来を見据えたとき、環境モニタリングによって得られるデータを栽培管理ソフトウェアが解析するとともに、様々な機器を的確に制御することが必要である、という考えについて第1話「アスパラガス栽培におけるIoT」で触れました。
さらに、アスパラガスの施設栽培には、北海道農業における冬期間の新たな農業収益を確立する可能性があります。それを実現するために必要なのが、伏せ込み促成栽培という栽培技術です。今回は、アスパラガスの安定生産を目指した伏せ込み促成栽培に関する研究とスマート農業共同体(以下、SAcと表記)との関わりについてご紹介します。
アスパラガスの伏せ込み促成栽培と現状の課題
アスパラガスの伏せ込み促成栽培とは、1~1.5年間露地圃場で養成した根株を掘り上げ、温床線等で加温したビニールハウス内に伏せ込み、12月~2月の冬期に収穫して出荷する栽培方法です(写真1、図1)。
写真1 伏せ込み促成栽培圃場における若茎の萌芽状況
図1 アスパラガス伏せ込み促成栽培における株養成法
冬期間の農業所得向上、労働力や施設の有効活用という面から、近年、北海道内の産地において注目されてきました。これまでの研究では、アスパラガスの品種毎の休眠特性を解明し、伏せ込み促成栽培に利用可能な品種等を明らかにしてきました。
残された課題は「安定した株養生法の開発」、「根株伏せ込み後の伏せ込み床環境条件の解明」、「温床線の効果検証」、「詳細な食味評価」であると考えています。
課題解決へ向けた実証研究の始動
これらの課題のうち「根株伏せ込み後の伏せ込み床環境条件の解明」の解決には、根株伏せ込み後の地温および土壌水分の分布を経時的に計測する環境モニタリングを行う必要があるため、測定機器を準備することが出来、かつ生産現場とも近い企業との連携が必要でした。そこで、私自身も参画しているSAcの会員企業の株式会社サングリン太陽園との研究連携体制を築き、有限会社厚沢部町農業振興公社様の生産圃場にて実証研究を行うことにしました。モニタリングする項目は【地上面からの深さ5、20、35cmの3点の地温と同地点における土壌水分】【地表面からの深さ20cmのEC値】【トンネル内の温度と照度】です。
去る2019年12月17日、これらの測定を行うことが出来るセンサー機器を、厚沢部町のビニールハウス内に設置してきました(写真2)。使用する機器はSAc会員のベジタリア株式会社のFieldServer(フィールドサーバ)です。
写真2 伏せ込み促成栽培圃場に設置した、FieldServer(写真右)、センサー機器(写真左)
センサー機器の設置が完了したことにより、研究は新しいステップに移りました。必要に応じて、他のSAc会員企業との連携も検討しながら進めていきたいと思います。
この先の展開については、またの機会に紹介します。
■執筆者プロフィール
酪農学園大学農食環境学群循環農学類
教授 園田高広(そのだ たかひろ)
1986年 東京農業大学農学部農学科卒業
2002年 博士号授与(北海道大学) 「アスパラガスにおける効率的育種手法の開発」
2011年 酪農学園大学 農食環境学群 循環農学類 農場生態学研究室 准教授
2012年 同 教授
現在に至る
主な研究テーマはアスパラガスの安定生産に関する研究
●アスパラガス新品種の育成
●アスパラガス病害の生態に基づく防除法の開発
●アスパラガスの生理生態に基づく栽培法の開発