- 2024年11月
- 2024年10月
- 2024年7月
- 2024年6月
- 2024年5月
- 2024年4月
- 2024年1月
- 2023年12月
- 2023年11月
- 2023年10月
- 2023年8月
- 2023年4月
- 2022年6月
- 2022年5月
- 2022年4月
- 2022年3月
- 2022年2月
- 2022年1月
- 2021年12月
- 2021年11月
- 2021年10月
- 2021年9月
- 2021年8月
- 2021年7月
- 2021年6月
- 2021年5月
- 2021年4月
- 2021年3月
- 2021年2月
- 2021年1月
- 2020年11月
- 2020年10月
- 2020年8月
- 2020年4月
- 2020年3月
- 2020年2月
- 2020年1月
- 2019年12月
- 2019年11月
- 2019年10月
- 2019年9月
- 2019年8月
- 2019年7月
- 2019年6月
- 2019年5月
- 2019年4月
- 2019年3月
- 2019年2月
第28話・ヘソディムにおける予防の考え方(3)~東京農業大学・對馬先生の「ヘソディムの話」
第26話から、ヘソディム「健康診断に基づく土壌病害管理」が重視する「予防」について解説しています。今回は予防の意義と考え方について解説します。
4.予防の意義と取り組みの考え方
コロナ問題を通じて、病気になってから「治療」するよりも、病気が出ないように「予防」する方が、低コストで効果的に病気のまん延を防ぐができることをある程度理解したのではないでしょうか。そして、同じことが土壌病害についても言えることは言うまでもありません。このような思いは、土壌病害でひどい目にあった生産者、関係者は昔から感じていたと思うのですが、さまざまな理由から予防を重視した対策はとられていかったように思います。「予防の重要性はわかるのだけど、結構面倒でやってない」等々、理由は多数あるとは思うのですが、そこを整理しないことにはどんなに良い「防除技術」や「診断技術」があっても役立たないと思います。
そこで、改めて、これまで予防による対策が十分に実行されなかった要因を私なりに考えてみました。
1. 二次予防を重視する「カレンダー防除」に慣れている人にとって、一次予防を行うのが難しかった
2. 同様に、圃場毎に診断・対策を行う習慣が必ずしもなかった
3. 生産者の意識改革が起きていない
4. 生産者に常に寄り添う指導員がいない
1と2は、昨今言われている新しい出来事に対しての行動変容がいかに難しいかということを示していると思います。この問題については、これから徐々に「新体制に対応できる生産者」を育成し、少しずつヘソディムへの移行を進めていけたらと考えています。
3と4はヘソディムを普及する上でとても重視している点です。3については、生産者自身が「予防の意義」を科学的にしっかり理解し、主体的に「予防対策」に取り組んでもらえるように支援することが重要です。4を加えた理由は、生産者が「予防の意義」を理解すればひとりでも大丈夫だというほど、現実は単純ではないと思ったからです。
私が予防技術のひとつとして強調しているものに「発病株の抜き取り」があります。最近では、多くのマニュアルで「発病株の抜き取り」について言及されていますが、実際はどうでしょうか。「それはわかっているが、抜いていない」などの事例は数多くあるのではないでしょうか。(実際に私も経験しています。)これでは、どんなにマニュアルに記載しても、あるいは、直接生産現場で実演・指導したとしても良い成果は出ないと思います。
この問題を解決するためには、以下の2点が必要であると考えます。
1点目は、発病株の抜き取りがどのくらい発病のまん延防止に有効かをしっかりデータをもとに示し、それを生産者に理解してもらうことです。
ただし、同時に、生産者の側にも経営者として技術の意義を理解し、主体的に対策を講ずるという姿勢を持っていることが重要です。そして、そのような経営者と一緒に「成功例」を作り、他の生産者に宣伝していくのが効果的ではないかと考えています。
2点目は、「生産者に寄り添う体制」を構築することです。
自分自身の健康管理の経験から、技術の意義を理解して真剣に取り組んでいる生産者でも毎日孤軍奮闘しているのはとてもつらいのではないかと思いました。生産者の孤立を防止するために、何日かに1回でも、「ひと声かけあう仕組み」、言い換えると「生産者を孤立させず、誰かが常に寄り添う体制」が必要ではないでしょうか。
「生産者に寄り添う体制」としては、「ヘソディム指導員の活用」があると考えています。元々ヘソディム指導員は、新システムである「ヘソディム」を初めての方に理解してもらい普及を推進するために考えたのですが、圃場で奮闘している生産者の精神的な支えにもなってほしいと思っています。
具体的には、毎日、リモートでも良いから顔を見ながら「今日は発病株がありましたか」や「発病株抜き取りましたか」など「声をかける」というものです。この「声かけ」だけでも、生産者の取り組みが違ってくるのではないかと思っています。他にも、個人レベルの対応ではなく、いろいろな体制(地域ぐるみの支援体制(広域に、一人ひとりに声をかける)、リモートでリアルタイムに相談できる体制など)も考える必要があると思っています。
そこには、新しいビジネスのチャンスもあると考えます。こうした取り組みについて、皆さまから多くのご意見をいただけたら幸いです。
参考文献(第26~28話)
・次世代の健康問題と予防医学の将来展望平成(平成12年5月29日).日本学術会議第7部、予防医学研究連絡委員会
■執筆者プロフィール
東京農業大学生命科学部分子微生物学科植物共生微生物学研究室
教授 對馬誠也(つしま せいや)
1978年 北海道大学農学部農業生物学科卒業
1980年 北海道大学大学院修士課程 修了
1995年 博士号授与(北海道大学) 「イネもみ枯細菌病の生態と防除に関する研究」
1980年 農林水産省九州農業試験場病害第一研究室
1991年 農林水産省農業環境技術研究所微生物管理科
1995年 農林水産省東北農業試験場総合研究第3チーム
2000年 農林水産省農業環境技術研究所微生物管理科
2001年 独立行政法人農業環境技術研究所農業環境インベントリーセンター微生物分類研究室室長
2007年 独立行政法人農業環境技術研究所生物生態機能研究領域長
2009年 独立行政法人農業環境技術研究所農業環境インベントリーセンター長(2015年退職)
2015年 非営利活動法人活動法人圃場診断システム推進機構理事長
2017年 東京農業大学生命科学部分子微生物学科植物共生微生物学研究室 教授(2022年退職)
2022年 NPO法人圃場システム推進機構内にHeSoDiM-AI普及推進協議会を設立(代表)
現在に至る