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第27話・ヘソディムにおける予防の考え方(2)~東京農業大学・對馬先生の「ヘソディムの話」

第26話に引き続き、ヘソディム「健康診断に基づく土壌病害管理」が重視する「予防」について解説していきます。今回は予防医学を参考にもう少し詳しく整理したいと思います。

 


 

2.予防医学における予防の定義

日本学術会議サイト内の「次世代の健康問題と予防医学の将来展望によると、予防には、以下の一次予防、二次予防、三次予防があります。

 

一次予防とは、いわゆる健康な時期に、栄養・運動・休養など生活習慣の改善、生活環境の改善、健康教育等による健康増進を図り、さらに予防接種による疾病の発生予防と事故防止による傷害の発生防止をすることである。

②二次予防は、不幸にして発生した疾病や傷害を検診等によって早期に発見し、さらに早期に治療や保健指導などの対策を行い、疾病や傷害の重症化を防ぐ対策のことである。

③三次予防とは、治療の過程において保健指導やリハビリテーション等による機能回復を図るなど、QOL(Quality of Life)に配慮することによって再発防止対策や社会復帰対策を講じることである。

 

上記のことを簡単に整理すると以下のようになると思います。

一次予防:健康な時期にいろいろ対策を行い、傷害の発生防止をすること

二次予防:疾病や傷害を早期に発見し、重症化を防ぐ

三次予防:治療の過程において回復を図り、再発防止対策や社会復帰対策を講ずる

 

この定義に「カレンダー防除」と「ヘソディム」を当てはめてみると、「カレンダー防除」二次予防を中心とした方法で、「ヘソディム」一次予防を重視した方法ということができるのではないでしょうか。

つまり、両手法とも「予防を重視」しているのですが、違いは一次予防中心か二次予防中心かということだと考えてよいと思います。

 

次に、これらの予防法については以下ことが書いてありました。

(予防の段階と予防の意義)

一次、二次、三次予防のうち、最も効果があるのは言うまでもなく一次予防である

一次予防を目指すヘソディムによる対策は、最も効果的であると考えることができますので、ぜひ、社会実装したいと考えます。

 

(健康を維持している決定因子)

健康を維持するのに重要な要因は何か、という大変興味深いことが掲載されていました。素人の私は、医学の治療技術の発展が一番大きく貢献しているのではないか、と考えていたのですが、結果は、以下のようになっており驚きました。

60%:環境、食事、活動、休養、その他ライフスタイル

25%:遺伝要因 

15%:治療

「マスコミを含めて一般の人々は臓器移植などに過大な関心をもつことが多いようである。しかし、禁煙、運動、体重管理などの自らの日常の生活行動にこそ、疾病を防ぎ健康を維持する最も重要な要因があることを忘れてはならない。」

 

これまで「未病」の段階から病気の出ない圃場づくり、周囲の健全な環境づくりを重視することがとても重要であることを、広く生産者やヘソディム指導員に伝えてきましたが、改めて一次予防の重要さを認識することができたのではないでしょうか。

ヘソディムは、とくに問診(生産者の活動、圃場の状況、圃場の周辺環境の状況等々)を重視しています。今後、さらに問診による情報を活かした圃場毎に最適マニュアル(これからはHeSoDiM-AIを使って作り上げていくことになりますが)を開発していきたいと考えています。

 


 

 

■執筆者プロフィール
東京農業大学生命科学部分子微生物学科植物共生微生物学研究室
教授 對馬誠也(つしま せいや)

1978年 北海道大学農学部農業生物学科卒業
1980年 北海道大学大学院修士課程 修了
1995年 博士号授与(北海道大学) 「イネもみ枯細菌病の生態と防除に関する研究」
1980年 農林水産省九州農業試験場病害第一研究室
1991年 農林水産省農業環境技術研究所微生物管理科
1995年 農林水産省東北農業試験場総合研究第3チーム
2000年 農林水産省農業環境技術研究所微生物管理科
2001年 独立行政法人農業環境技術研究所農業環境インベントリーセンター微生物分類研究室室長
2007年 独立行政法人農業環境技術研究所生物生態機能研究領域長
2009年 独立行政法人農業環境技術研究所農業環境インベントリーセンター長(2015年退職)
2015年 非営利活動法人活動法人圃場診断システム推進機構理事長
2017年 東京農業大学生命科学部分子微生物学科植物共生微生物学研究室 教授(2022年退職)

2022年 NPO法人圃場システム推進機構内にHeSoDiM-AI普及推進協議会を設立(代表)

現在に至る