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第2話・タマネギの小菌核病
〜農学博士・児玉不二雄の植物の病気の話

今回は「タマネギの小菌核病(ショウ・キンカク・ビョウ)」を解説します。

読みほぐしにあたっては第1話で紹介した「病徴・病斑」というキーワードが役に立ちます。ぜひ読み返してみてください。

 


 

《 病徴 》

はじめに葉の先端よりやや下方、あるいは中位の部分に、アズキ粒ぐらいの大きさの白色の斑点ができます。これが次第に拡大して周辺の不鮮明な縦長の病斑となります(写真1)。さらに症状が進むと、葉の上方全体が灰色がかった褐色となり、病気にかかった葉「病葉(ビョウヨウ) 」はしおれてしまいます(写真2)。

 

病斑は1株のタマネギの下葉2〜3枚目に生じることがほとんどですが、上方の若い葉にも拡がることがあり、こうなると株全体が枯死症状を示します。枯死しない病葉でも、降雨が多いと葉の内側に白い綿毛状の菌糸(カビ)がまん延します。さらに症状が進むと、病斑の表面に直径が2〜3ミリメートルの黒いゴマ粒状のものが付着するようになります(写真3)。これは「菌核」と呼ばれるもので、葉にしっかりくっついておりはがれません。

写真1 タマネギの 葉に生じた病斑

 

写真2 株全体に広がった枯死症状

 

写真3 葉に付着した菌核(2〜3mmの黒いゴマ粒状のもの)


 

《 伝染経路と発病条件 》

病原菌はカビです。葉の上にできた菌核が伝染源であり、これが土中に落ちて春秋に地表にキノコを生じます。このキノコは正しくは「子(シ)のう盤」(写真4)と呼ばれ、傘の部分に胞子をつくります。そこから胞子が飛んで病気が感染・まん延していくのです。

菌核からキノコが芽を出して胞子をつくるには、14℃前後の低温と水分が必要です。つまりこの病気の発病条件としては、低温と降雨が望ましいのです。菌はタマネギの葉を侵す能力は強いのですが、鱗片(リンペン)(球の部分)を侵す力は微弱です。

写真4 菌核が土中に落ちて生じたキノコ


 

《 伝染源のこと 》

今回はキーワードとして、伝染源としての菌核を取り上げてみましょう。菌核は病原菌の立場からいえば、土の中で生き残る大切な〝姿〟です。一種の「耐久体(タイキュウタイ)」といわれます。菌核には、キノコを作らない種類もあります。その写真を1枚載せておきます。ジャガイモの表面にしがみついている菌核(写真5)です。この病気のことは別の回でご紹介します。

写真5 ジャガイモの表面にしがみついている菌核


 

今回のキーワード:菌核

 

■執筆者プロフィール

児玉不二雄

Fujio Kodama

農学博士・(一社)北海道植物防疫協会常務理事。北海道大学大学院卒業後、道内各地の農業試験場で研究を続け、中央農業試験場病理科長、同病虫部長、北見農業試験場長を歴任。2000〜2014年まで北海道植物防疫協会会長を務める。

45年以上にわたって、北海道の主要農産物における病害虫の生態解明に力を尽くし、防除に役立てている植物病理のスペシャリスト。何よりもフィールドワークを大切にし、夏から秋は精力的に畑を回る。調査研究の原動力は、“飽くなき探究心”。

 

※本コラムの内容は、2009年よりサングリン太陽園ホームページ 「太陽と水と土 」に連載しているコラムを加筆・修正したものです

※特別の記載がない限り、掲載写真は著者提供もしくは「北海道病害虫防除提要(第6版)」からの借用によるものです