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第28話・さまざまな灰色かび病〜(2)イチゴの灰色かび病など 後編
〜農学博士・児玉不二雄の植物の病気の話

前回(第28話・さまざまな灰色かび病〜(2)イチゴの灰色かび病など 前編)の続きです。

 


 

《防除のポイント》

多肥、密植をしないこと。圃場の多湿を避けること。トンネル、ハウス栽培では換気を行うこと。下葉や枯れた部分を丁寧に除去・処分すること。開花前から薬剤の予防散布を行うこと。ただし、薬剤散布単独では充分に防除できないので、耕種的方法との組み合わせで総合的に実施する必要があります。

 


 

《病原性と寄主範囲》

ところで、病原菌がどんな植物を侵すのか、その植物をひとまとめにして「寄主(キシュ)範囲」または「宿主(シュクシュ)範囲」といいます。host rangeの訳語です。
灰色かび病が起こす病原菌すなわちBotrytis cinerea(ボトリチス・シネレア)の場合は、イチゴのほか、キュウリ、ナス、トマト、リンゴ、ブドウなど多くの野菜、果樹類などが寄主範囲です。その証明といっては大袈裟ですが、それぞれの植物の発病症状(=病徴)を眺めてください(写真3、4、5、6)。どの植物も、葉や果実の部分が侵されています。病原菌が侵す植物が多いことを、その病原菌の「寄主範囲が広い」といいます。

 

▲写真3 トマトの灰色かび病:葉の症状

 

▲写真4 メロンの灰色かび病:葉の症状

 

▲写真5 リンゴの灰色かび病:果実の症状

 

▲写真6 ブドウの灰色かび病:果実の症状

 


 

《病原菌の「かび」について》

もうそろそろ「かび」と書くのをやめて、「糸状菌(シジョウキン)」と表記します。以前にも書いたと思いますが、これがカビの正式な名前なのです。大部分の糸状菌は、菌糸と胞子からできています。ごくまれですが、胞子を作らないものもいます。

 


 

今回のキーワード:寄主範囲、糸状菌、菌糸

 

■執筆者プロフィール

児玉不二雄 Fujio Kodama

農学博士。北海道大学大学院卒業後、道内各地の農業試験場で研究を続け、中央農業試験場病理科長、同病虫部長、北見農業試験場長を歴任。その後、北海道植物防疫協会にて、会長理事等を務めた。

45年以上にわたって、北海道の主要農産物における病害虫の生態解明に力を尽くし、防除に役立てている植物病理のスペシャリスト。何よりもフィールドワークを大切にし、夏から秋は精力的に畑を回る。調査研究の原動力は、“飽くなき探究心”。

 

※本コラムの内容は、2009年よりサングリン太陽園ホームページ 「太陽と水と土」に連載しているコラムを加筆・修正したものです

※写真:野津あゆみ氏、田村 修氏、堀田治邦氏、谷井昭夫氏、著者