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作付調査は空から行う時代!
自治体の労力を大幅削減した新システムとは?
新潟県新潟市西区では、水田での転作作物の作付調査にこれまで大幅な労力を割いていました。約1200haの確認作業に延べ約180人。「どうにか労力を減らしたい」。そこで市が取り入れたのがドローンを活用した作付確認システム『いろはmapper』です。約9割の労力削減を実現させたシステムについて、市や開発関係者にお話を伺いました。
空から作付を確認する『いろはmapper』
『いろはmapper』は、株式会社スカイマティクスが開発したドローンを活用した作付調査を効率化するためのソリューションです。対象の農地の上空にドローンを飛ばして、農地の様子を撮影。撮影した画像をクラウド上で集約、マップ化することで作付の実態をパソコンから確認することができます。
この仕組みは、同社が既に提供を開始している葉色解析クラウドサービス『いろは』を、作付調査に適した形にカスタマイズすることで開発されました。
固定翼ドローンとそれに搭載されたSONY製の超高性能カメラを利用することで、広大な面積を高解像度の画像に収めることを可能にしています。
固定翼ドローン
新潟市西区で実運用スタート!約9割の労力削減に成功!
新潟市西区農業再生協議会の事務局 新潟市西区農政商工課の主査、金井勤(かない・つとむ)さんに、今回の導入についてお話を伺いました。
「新潟市西区では、2週間の作付調査に農家や関係職員のべ約180人を投入し、大きな労力と時間がかかっていました。何とかできないかと、スカイマティクスに相談したのがきっかけです」この相談を受けて同社が開発したのが『いろはmapper』です。
『いろはmapper』を利用した作付調査は、相談から約1年を経てついにスタートしました。ドローンを活用した作付調査の実運用は本州で初の試みでしたが、事前に、周辺地域への説明を行った際には反対意見もなく、順調に導入できたそうです。
対象面積は実に約1200ha、オペレーターが事前に組んだ飛行プランに沿ってドローンを飛行させ、上空から圃場を撮影しました。パソコンで画像を見た金井さんは「確認すべき農地とそこに植えられている作物をはっきりと判別することができた」と当時の驚きを振り返ります。
パソコン上で画像を確認
作付調査は約2週間で無事完了。「約9割のマンパワーが削減でき余裕が生まれたことで、職員の労働効率改善や残業の抑制ができる」と金井さんは今回の成果に満足していました。「『いろはmapper』は、経営所得安定対策等における補助対象作物の面積が多い自治体さんにはお勧めしたいですね」と今後の動きにも期待しているようでした。
圃場の空からの画像
一方、ドローンのオペレーターを務めた有限会社森山環境科学研究所の検査技術部長、森山誠(もりやま・まこと)さんは当時の飛行の様子をこう話します。「バッテリーと地区特有の風を考えながら、とにかく効率よく飛べるプランを検討しました。風が強い場所ではマルチコプターに切り替えるなどの安全判断を現地で行いながら飛行させました」
有限会社森山環境科学研究所 検査技術部長 森山誠(もりやま・まこと)
【ドローン飛行の様子】
この度の固定翼機の飛行に際しては国土交通省から目視外飛行の承認を得て、補助員を設置した上で実施されたとのこと。人口集中地区上空や高速道路付近など一部飛ばすことができないエリアがあったり、また天候の影響を受ける日もあったものの、従来の調査に要していた日数に比べると大幅に短縮することができたそうです。
「広範な面積を撮影していると撮影が完了したエリアとそうでないエリアがわからなくなるが、『いろは』には画像をオンラインの地図上にマッピングする機能があり、随時画像をアップロードすることで計画の進捗管理が行え、撮影作業を効率的に進めることができた」と森山さんは振り返ります。
『いろはmapper』開発の舞台裏
十二分な結果となった今回の運用。その裏では苦労とそれを乗り越えるための同社の工夫が詰まっていました。スカイマティクスで、営業企画部門の統括を行っているセールスディレクターの伊達卓馬(だて・たくま)さんは話します。
株式会社スカイマティクス セールスディレクター 伊達卓馬(だて・たくま)
「『いろはmapper』は当社が提供している葉色解析サービス『いろは』をベースに開発していますが、中身はほとんど別物です。撮影対象が一筆単位の『いろは』に比べ、作付調査では地域単位と面積規模が比較にならない程広く、かと言ってデータには品目が確認できるだけの精度が求められる。膨大な量の画像データから、新潟市の担当者の方が必要とされている情報だけをスマートに抽出する手法を模索しました」
中でも、最大の課題は「広大な面積の写真を、いかに効率的に撮影し、インターネット上でストレスなく表示させるか」だったそうです。複数の画像を繋ぎ合わせて1枚の大きな画像を作るには、オルソモザイクという手法がよく使われます。しかし、この手法では、写真同士をつなげる際に、言わば、のりしろの部分を広くとる必要があります。そのため、多くの写真を用意しなければならず、データ量が増えることに加え撮影時間も大幅に増加します。
「その結果、『いろはmapper』では、撮影の手段として固定翼ドローンを採用し、また自治体が運用する農地GIS(地理情報システム)の情報を活用することにしました。固定翼ドローンが撮影した高精度な画像データをGIS上にレイヤーする(重ねる)ことで既存の農地マップに作付情報をリンク付けし、ウェブ上でストレスなく作付確認ができる方法を実現しました。従来の調査では再確認のために農地を再度訪れるといった非効率が発生していましたが、データに残すことでそうした二度手間を防ぐことができるようになります。また、経年で見ていくことで耕作放棄地を抽出するといった発展的な活用方法も考えられます」
位置情報と突き合わせることでズレなく地図で確認できます
同社はこうした結果を踏まえて、さらなる展開を見据えています。
『いろはmapper』はあくまで本家のシステムを活用した一事例であり、先述の『いろは』や、農薬散布サービス『はかせ』など、他にもドローンやリモートセンシング技術によるスマート農業サービスを提供しています。
伊達さんは「今後、日本の生産者の皆様は、ますます規模を拡大していかれます。その際に、限られたマンパワーで大規模に営農をされるためのツールとして、ロボットやITといった技術が活用されるべきと思います。当社のリモートセンシングや解析技術を活用したサービスも、1人当たりの経営面積を拡大するためのツールの一つであると捉えており、こうしたサービスの開発・提供を通じて日本の農業の課題を解決する役割を担っていきたい」と話します。
ICTサービスで、新しい展開が広がるスマート農業。さらなる未来に期待が広がります。
※テキスト、画像はマイナビ農業より転載。