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ドローン画像を「価値ある情報」に変える
圃場管理サービス『いろは』とは?

 

 

自動で画像を解析し、農家の目の代わりとなって活躍! そんな注目のサービスである、スカイマティクス社の『いろは』を活用する広島県庄原市の農業生産法人『株式会社vegeta(ベジタ)』を訪ねました。導入しようと思ったきっかけ、使ってみて大きく変わったこと、さらに今後のビジョンなどを、社長の谷口浩一さんに伺いました。

 


 

 

圃場が広くなるほど人が管理するのは難しい

 

vegetaが拠点を置くのは広島県の北東部、国定公園帝釈峡を抱えるみずみずしい町、庄原市東城です。地元出身の谷口さんは20歳の若さで就農した後、『有限会社べジタファーム』を設立。2015年に現在の社名へと変更しました。この頃から本格的にキャベツ栽培を手がけるようになったそうです。

 

株式会社vegeta代表取締役の谷口浩一(たにぐち・こういち)さん

 

「広島といえば、お好み焼きです。大量にキャベツを使う料理ですが、実は県内産キャベツの割合はとても低く、他県産のものをメインで使っていたんですね。県の名物なのにこれではまずいと、県が主導して大規模造成団地の拡充によるキャベツ栽培を推し進めていきました。当社も積極的に入植し、今では庄原市内をはじめ県内各地に9ブロック、約100haのキャベツ畑を展開しています」と谷口さんは話します。

 

同社が特徴的なのは、標高0mの温暖な瀬戸内海エリアから、スキー場がある標高900mの中国山地エリアまで、多様な場所に圃場を持っていること。広島県ならではの高低差のある地の利を生かして、年間を通して収穫できるようにしているのです。

 

8月下旬ごろの事務所近くのキャベツ畑の様子。より高地にある畑ではこの時期が収穫シーズン真っ最中だそう

 

「そうなるとすべてを人が見て回ることはできません。そこで考えたのがドローンの活用です。もともと私はドローンに興味があり、これを使わない手はないなと思ったんです。いろいろ調べて、ドローン画像の解析サービスを提供する株式会社スカイマティクスの『いろは』を知り、国のスマート農業の実証事業によって2019年春に導入しました」

 


 

 

生育管理がしやすくなって生産性が向上!

 

『いろは』はドローンで撮影した画像を、クラウド上で保存・解析・共有するサービスです。画像をアップロードするだけで、圃場内の位置を自動で認識し、地図上に配置してくれます。専用の高価なドローンを購入する必要はなく、市販のドローンでOK。あらかじめコースをプログラムしておけば、その通り自動で撮影してくれるからマニュアル操作も不要で、とても簡単で便利だと谷口さんは言います。

 

ドローンで撮影した谷口さんの圃場

 

「地上から水平な目線で見るのと、上空から見るのとでは全然違うんですね。活着率も分かるし、この辺に追肥が必要だとか、土地に傾斜があってここは水はけが悪い、といったことが立体的に理解できるようになりました。また、エリアを決めて撮影することで、個体数や個体差の把握など、全体の生育管理が効率よくできるようになりました」

 

ドローンで撮った画像を自動でマッピング

 

vegetaではキャベツの裏作として栽培しているもち麦の生育状況把握や、ビニールハウスの環境整備などにもドローンを活用しています。

 

ドローンスクールを運営する谷口さんによると、生産者でドローンを持っている方は意外に多いのだとか。

 

「でも私自身がそうだったように、画像だけ撮っておしまいというケースがほとんどなんですね。それだけではあまりにもったいないと思います。『いろは』が素晴らしいのは、専用機ではなく市販のドローンでいいところ。手持ちのドローンを活用することができるんですよ」

 


 

 

画像解析やAIを駆使してサービスを提供

 

「『いろは』の画像解析機能を使えば、特定の大きさのキャベツの分布状況なども分かります」と話すのは、スカイマティクスの営業担当・赤堀日向子さんです。

 

株式会社スカイマティクス 営業担当 赤堀日向子(あかほり・ひなこ)さん

 

『いろは』では、地形の高低差を色分けした高低差マップ、葉色解析といって生育ムラが可視化された色味マップなども提供。こうして作業の効率化をより進めることができます。

 

また、クラウドを通じて畑の状況を関係者と共有することができるため、流通業者や集荷業者との情報共有もスムーズ。圃場ごとの収量予測が可能になることで、農作物の安定供給を実現するための一助となります。さらに、スマート農業に関するサービスを提供する企業との連携も進めています。

 

サイズごとに分類し、圃場にあるキャベツの個数を自動で算出

 

「加工会社や販売店に対するトレーサビリティの情報発信ツールとしても活用していきたいし、ゆくゆくはそれを観光PRにもつなげたいとも思います」と、谷口さんの夢は膨らみます。

 


 

 

『いろは』でつくる新しい農業の未来

 

谷口さんはさらに続けます。

 

「『いろは』はデータを蓄積できるので、将来的な農業の安定化にも貢献してくれそうです。従来の農業には生産者の経験値と勘に頼るようなところがありますが、この地域のこの標高ではこういう品種で…とデータを残しておくと、失敗のリスクは減りますよね。そういう情報をどんどん公開して、就農しやすい環境づくりをみんなで進めていきたいです。中山間地域にとって、農業はなくてはならない大事な産業ですから、地域ぐるみで守っていかなければならない。『いろは』にはいろんな期待をしていますよ」

 

その話を受けて、赤堀さんが大きく頷きます。

 

「私たちもこうした生産者の方々の意見をたくさん伺いたいと思っています。生産者の皆様は、作物や営農規模によって個々にニーズや課題をお持ちです。そうした課題意識を伺いながら、それぞれに応じたソリューションを、画像解析やAI(人工知能)等の技術を活用して開発・提供し、さらには普及につなげていくことが当社のようなテック企業の役割であると考えています。農業のプロとテックのプロが協業することによって、価値あるスマート農業技術が生まれ、農業をより発展させることができると思っています」

 

キャベツの収量診断画像

 

最後に「今では広島県内のキャベツ自給率もアップしたんですよ」と、谷口さんが笑顔で教えてくれました。もちろんvegetaの躍進があったからこそ、それが実現したのでしょう。

 

谷口さんは、今後さらに経営規模の拡大を目指す上で『いろは』が役に立つのだと話します。事務所にいながら農地の状況を把握できるサービスは、あらゆる農業関係者にとってますます注目される存在になっていきそうです。

 

※テキスト、画像はマイナビ農業より転載。