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農作物の管理から収穫量アップまで
「アメリカのドローン導入実例」
農業における技術革新が進むアメリカにおいて、どのようにドローンが利用されているのでしょうか。農作物の健康状態の管理や、データ分析での収穫量アップへの期待など、「JETRO ニューヨークだより 2016年4月(八山幸司著)」より、導入事例と共に最新のドローン事情についてご紹介します。
上空からの農作物の生育状況チェックや農薬の散布など、農業にドローンの活用が始まっています。ドローンに代表される最新テクノロジーやデータを活用する「精密農業」は、気候変動や人口増加といった地球規模の課題から、人手不足や後継者問題、収穫の安定化や収益の増化といった個別の課題まで、農業に関する問題に大きな変革をもたらす可能性を秘めています。
今回はアメリカでの最新事例を、「JETRO ニューヨークだより 2016年4月(八山幸司著)」(※1)をもとにご紹介します。
大きな変革をもたらすドローン
農業におけるドローンの活用は、広大な農地を持つアメリカで始まりました。ドローンを使って上空から撮影し、農作物の生育状況を確認します。ドローンのルートを決めるだけで、自動で飛行して情報を集め、様々なセンサーを使うことで、農作物の成長や土壌の状態など多くの分析が可能であり、近年では高範囲を高い解像度で撮影が可能なドローンも登場している。
作物の生育状況を上空から定点観測することで、従来なら見過ごされてきた畑と作物の状況を把握し、将来的なアプローチが可能になりました。本稿はドローンを農業に活用する先進国アメリカの事例を紹介します。
米国におけるドローンの導入事例
日本では、空撮用の撮影機材と位置付けられているドローンですが、アメリカなどのドローン先進国では、その用途が拡大しています。アメリカの調査会社「Grand View Research」によると(※2)、米国のドローン市場は2022年まで、年間成長率16.9%で拡大するとみられています。活用が最も期待される分野は、警察や軍など政府関係での使用ですが、その次に農業での利用が注目されています。
1:農作物の健康状態の管理
ドローンを使えば上空からの画像データの収集が可能になります。例えば、近赤外線カメラを用いて、農作物が反射する光の波長を分析することで、農作物の生育状態を確認できるデータを収集することが可能です。データの収集には様々なセンサーが用いられており、例えば、可視光と近赤外線を感知できるセンサーを使うことで、植物が反射する光の波長を分析して農作物の健康状態を示す、NDVI(Normalized Difference Vegetation Index)という値の算出や、植物の栄養状態を示すCCCI(Canopy Chlorophyll Content Index)という値を知ることができる。
さらに、温度センサーを使って農作物のストレス度合いを調査することができます。それらのデータを使うことによって、今まで不可能だった対策等を施すことができるようになり、作付面積における生産量が向上しました。
2:データ分析で収穫アップの期待
実際にドローンを使ってデータを収集し、そのデータを活用して収穫量アップを試みている事例があります。カナダでの事例です。(※3)
田植えを終えた210エーカー(約85ヘクタール)の農地の上空にドローンを飛ばして、NDVIを示す画像を作成。次に、3週間後に同じようにドローンを使ってNDVI画像を作成し、画像を比較してみたところ、田植え時期を1週間ずらした場所で、作物の成長に大きな違いが生まれていました。この農家は田植えの時期が1週間ずれただけで作物の成長が大きく変わることはないと考えていたため、NDVIの画像によって初めて違いに気づいたという。
ドローンで収集したデータを分析することで、農作物の植え付け時期の見直しや、肥料を与えるタイミングを改善できるのです。仮に8%の収穫向上が可能とした場合、アメリカの平均的な農家であれば2万1,874ドル(約250万円)の収入アップが見込める計算になります(※4)
各国からドローンが登場
農業用ドローン MG-1(写真提供:DJI Japan)
アメリカでは、メーカーごとの特長を生かした農業用ドローンが登場しています。農業用ドローンは、様々なメーカーから発表されており、データ分析に特化したサービスや広範囲が撮影可能なドローンなどが登場している。世界各国のドローンメーカーが農業向けドローンを発表しており、高性能なセンサーや長時間飛行が可能なものなど、農業データの収集に必要な機能を備えた製品が登場しています。
ドローンには大きく分けて2つのタイプがあります。ドローンの主流は、複数の回転翼を持つタイプですが、飛行機のようなドローンもあります。固定翼タイプは、飛行距離が長く搭載量も多いのがメリットですが、離着陸のためには滑走路が必要です。ドローンの特性である「場所を選ばず離陸できる」ことを重視すれば回転翼タイプが主流なのもうなずけます。
民間用ドローン市場で大きなシェアを占める、中国のドローンメーカー「DJI」は、日本でも農薬の散布が可能な「高性能農薬散布用ドローン DJI AGRAS MG-1」を販売しています。(※5)同機購入者には、操縦方法、農薬の取り扱い、安全対策などの内容をまとめたオリジナルテキストと、それを用いたオペレーター研修を行なっています。さらに代理店の認定教官による教育プログラムも実施しています。初心者向けの5日間コース、経験者向けの3日間コースで、サポート体制を作っています。
農林水産省発表の資料によると、世界の人口は2050年までに92億人に達し、食料の需要は60%以上増加すると言われています(※6)。一方で、地球温暖化の影響により農地に適した土地は減り、このままでは世界の人口に十分な食料が供給されなくなると言われています。限られた土地でより多くの収穫を得るために、農業へのドローンの活用は、食料生産量を増やす主役としての可能性を広げる、大きな期待が寄せられています。
【参照】
(※1)米国における農業とITに関する取り組みの現状(JETROニューヨークだより 2016年4月)
https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/02/2016/da9e8f3532003856/rpNy201604.pdf
(※2)Commercial Drone Market Worth $2.07 Billion By 2022 (Grand View Research)
http://www.grandviewresearch.com/industry-analysis/global-commercial-drones-market
(※3)https://blog.dronedeploy.com/drones-a-soybean-grower-s-best-friend-51f173e27922#.kx1f8asy4
(※4)https://blog.dronedeploy.com/drones-a-soybean-grower-s-best-friend-51f173e27922#.3u4pz3d33
(※5)DJI、農薬散布用ドローン「AGRAS MG-1」の国内販売を開始(DJI)
http://www.dji.com/jp/newsroom/news/mg-1-on-sale
(※6)国際的な食料需給の動向と我が国の食料供給への影響(農林水産省)http://www.maff.go.jp/j/zyukyu/jki/j_zyukyu_doko_m/attach/pdf/zkyu_kyo-2.pdf
※テキスト、画像はマイナビ農業より転載。各データは2018年1月 日本政策金融公庫調べ