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スマート農業技術活用促進法で受けられる特例措置

2024年10月1日、農業の生産性向上を図ることを目的に、「農業の生産性の向上のためのスマート農業技術の活用の促進に関する法律(以下、スマート農業技術活用促進法)」が施行されました。スマート農業技術の活用に取り組む生産者や、技術開発に取り組む事業者が認定を受けると、税制優遇や低利の融資を受けることができます。

今回の農トレでは、法律の概要や補助制度についてご紹介します。

 


 

スマート農業技術活用促進法 策定の背景

農林水産省によると、日本の農業を支える「基幹的農業従事者」は、今後20年間で現在の116万人からおよそ1/4にまで減少することが見込まれています。かねてより高齢化や担い手の不足が課題として挙げられてきた農業業界ですが、従来の生産方式のままでは、農業の持続的な発展や、食料の安定的な確保が難しくなるかもしれません。すでに一部のスマート農業技術は実用化が始まっているものの、農業者が減少している今、より生産性の高い農業を確立するために作業の効率化が強く求められています。そこで政府は、スマート農業に適した生産方式へと転換を進めるとともに、スマート農業技術の開発と普及を促すため、「スマート農業技術活用促進法」を整備しました。

 

 

●2030年には基幹的農業従事者※が30万人にまで減少する
※基幹的農業従事者…15歳以上の世帯員のうち、ふだん仕事として主に自営農業に従事している者
(農林水産省の資料より引用)

 

 

認定を受けるには実施計画の提出が必要

 

 

スマート農業技術の活用を促進するために、政府が掲げたのは「農業現場での技術導入」と「特に必要な分野の技術開発」のスピードアップです。たとえ導入意欲があっても、導入費用の高さや資金繰りの厳しさが障壁となる例や、先端技術を活用した作業では従来と比べて不ぞろいが発生しやすいなどの課題がありました。

こうした課題を解消し、スマート農業技術の導入を推進するため、農業者や事業者が申請する「スマート農業技術の活用及びこれと併せて行う農産物の新たな生産の方式の導入に関する計画(生産方式革新実施計画)」や「スマート農業技術等の開発及びその成果の普及に関する計画(開発供給実施計画)」を農林水産省が認定し、認定を受けた者は金融・税制等の支援措置を受けることができる制度が登場しました。

 

● 生産方式革新実施計画

申請者

農業者または農業者が組織する団体

 

・申請先

農林水産省

 

・認定の対象となる事業活動
スマート農業技術※1 の活用 と 農産物の新たな生産の方式の導入※2をセットで相当規模で行い、農業の生産性を相当程度向上させる事業活動
例)農業用ドローンの導入+水稲直播栽培への体系転換、センシング用ドローンの導入+データに基づいた可変施肥の実施 など

 

※1 スマート農業技術 とは…
ロボットトラクター、自動操舵システム、自動収穫機、運搬ロボット、草刈ロボット、リモコン草刈機、収量センサ付きコンバイン、水管理システム、ドローン/人工衛星、環境制御システム、経営・生産管理システム、家畜の生体管理システム、スマート選果システム などが例に挙げられています

 

※2 農産物の新たな生産の方式の導入 とは…
(あ)~(う)のいずれかに該当する生産の方式の導入に取り組むものと規定されています
(あ)スマート農業技術を活用した作業効率の向上に資する圃場の形状、栽培方法、品種などの導入
(い)スマート農業技術の活用による機械化体系に適合した農産物の出荷方法の導入
(う)スマート農業技術により得られるデータの共有などを通じた有効な活用方法の導入

 

・認定を受けるメリット

金融上の特例措置
日本政策金融公庫から長期低利の融資を受けられます。
※償還期限は25年以内(食品等事業者は10年超25年以内)、据置期間は5年以内 などの条件があります

 

税制上の特例措置
・投資促進税制
活動に必要となる機械等の取得等をした場合に、令和9年3月末まで、特別償却(機械等32%※、建物等16%)の適用を受けることができます。
※スマート農業技術を組み込んだ機械装置については、7年以内に販売されたものに限る。
※スマート農業技術活用サービス事業者、食品等事業者は機械装置のみに適用され、特別償却率25%になる。

 

その他の特例措置

・野菜法の特例
スマート農業技術を活用した契約取引による産地リレー出荷体制の構築を可能とするものです。指定産地外の農業生産者が、契約指定野菜安定供給事業に参加できます。指定野菜の不作時に費用面での支援を受けられます。具体的には、実需者との定量・定価格供給の契約取引を⾏う⽣産者が、不作による供給量不⾜が⽣じた際、実需者との契約数量を確保するために不⾜分を市場などから調達した場合に交付金を利用できます。

 

・航空法の特例
ドローンなどの無人航空機を用いて農薬散布等の特定飛行を行う場合の航空法上の許可・承認の手続がワンストップ化されます。

 

・農地法の特例
農地をコンクリート等で覆う措置を実施する場合の農地法に基づく届出がワンストップ化されます。

 

 

● 開発供給実施計画

・申請者

スマート農業技術の開発・供給を行う事業者(農機メーカー、スタートアップ、サービス事業者・大学、公設試験研究機関等)

 

・申請先

農林水産省

 

・認定の対象となる事業活動

スマート農業技術等の開発※1 と 開発した製品の供給※2  を一体的に取り組む事業活動
例)ネギの自動農薬散布ロボットの開発+その技術を用いた農薬散布サービスの展開 など

 

※1 スマート農業技術の開発 とは…
上記でご紹介したスマート農業技術のほか、 生産方式革新事業活動のために用いられる農業機械等、種苗、肥料、農薬その他の農業資材に関する技術(機械での収穫が容易になる形質を持つ品種の開発、自動収穫ロボットに適した栽培体系の確立、ドローンでの散布に適した農薬の開発 など)が含まれます。

 

※2 開発した製品の供給 とは…
慣行的な方法と比べて品質や費用の面で優位性を有することや、適切に使用するために必要な措置(アフターサービス)を実施することなどが必要です。

 

政府が特に必要性が高いと認めた技術が「重点開発目標」として定められており、それに沿った開発や成果の普及を支援します。重点開発目標には、ニーズが高まっている一方で実用化まで至っていない収穫ロボットや、機械収穫しやすい形質をもつ品種の開発などが含まれています。

 

・認定を受けるメリット

①金融上の特例措置
日本政策金融公庫から長期低利の融資を受けられます。
※償還期限は25年以内(食品等事業者は10年超25年以内)、据置期間は5年以内 などの条件があります

 

②税制上の特例措置
・登録免許税の軽減
認定を受けた開発供給実施計画に従って行う会社の設立、出資の受け入れ、これに伴う不動産の所有権の移転等の際の登録免許税の軽減を受けることができます(令和9年3月末まで)。

 

③その他の特例措置
・農研機構の研究開発設備等の供用等
試験ほ場やロボットトラクターなど、農研機構が全国に保有する設備等の供用や専門家の派遣を受け、研究開発・実用化に取り組むことができるようになります。

 

・種苗法の特例
新品種の品種登録を行う場合、出願料・登録料(1~6年目)がそれぞれ3/4減免されます。

 

・農業競争力強化支援法の特例
農業競争力強化支援法に規定する事業参入に該当する場合、中小機構による債務保証を受けることができます。

 

・航空法の特例
ドローン等の無人航空機による農薬散布等の特定飛行を行う場合の航空法上の許可・承認の手続がワンストップ化されます。

 


 

法律の施行とともに申請の受付は開始されており、計画策定の手引き等については農林水産省のホームページ上で公表されています。「スマート農業技術を導入したい」「技術開発に力を入れたい」という方は、ぜひご確認ください。