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第31話・メロンつる割病 後編
〜農学博士・児玉不二雄の植物の病気の話

前回(第30話・メロンつる割病 前編)の続きです。

 


 

《伝染経路と発生環境》

病気にかかったメロンは枯れてしまいます。これを罹病残渣(リビョウ・ザンサ)といいます。つる割病の第一の伝染源です。残渣の中には、分厚い壁に包まれた病原菌の胞子(=厚壁胞子:コウヘキホウシ)が潜んでいて、メロンの根の先端(根毛)から侵入するのです。もう一つの伝染源は、種子です。病気に罹ったメロン種の中に、病原菌が潜り込んでいるのです。厚膜胞子は生存力が強く、長年にわたり土中でじっと潜んでいます。つまりメロンの連作は、発病を助長します。高温・乾燥年には発病が目立ちます。

 


 

《防除法》

1.施設栽培では、太陽熱や薬剤による土壌消毒を行います。
2.健全種子を用い、種子消毒を行います。
3.無病苗を定植し、病株は見つけ次第除去します。
4.この病気に対して、抵抗性品種が開発されています。しかし抵抗性品種に打ち勝つように変異した病原菌グループ(=レース)も出現していますので、慎重な品種選択が必要です。

 


 

《病原菌と寄主範囲》

この病原菌は、メロンにしか感染しません。病原菌が感染・発病させることのできる植物のグループを寄主範囲といいますが、この菌は寄主範囲が一つということです。名前はFusarium oxysporumf.sp. melonis(フザリウム・オキシスポーラム・フォルマ・スペシャーリス・メロニス)。全世界共通の呼び名です。

 


 

今回のキーワード:ツル(蔓)と茎、スポロドキア、厚壁胞子、レース

 

■執筆者プロフィール

児玉不二雄 Fujio Kodama

農学博士。北海道大学大学院卒業後、道内各地の農業試験場で研究を続け、中央農業試験場病理科長、同病虫部長、北見農業試験場長を歴任。その後、北海道植物防疫協会にて、会長理事等を務めた。

45年以上にわたって、北海道の主要農産物における病害虫の生態解明に力を尽くし、防除に役立てている植物病理のスペシャリスト。何よりもフィールドワークを大切にし、夏から秋は精力的に畑を回る。調査研究の原動力は、“飽くなき探究心”。

 

※本コラムの内容は、2009年よりサングリン太陽園ホームページ 「太陽と水と土」に連載しているコラムを加筆・修正したものです

※写真:著者