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第29話・病原体の王様 後編
〜農学博士・児玉不二雄の植物の病気の話

前回(第29話・病原体の王様 前編)の続きです。

 


 

《病原体の姿》

ところでここまで、注意深く“病原体”と書いてきたことに気付いた方がいたら、その方はなかなかです。病原“菌”ではないのです。病原体が糸状菌(カビ)のときにだけ、病原菌というのが正解です。次のように整理すると、わかりやすいと思います。

 

病原体 病害の
グループ名
具体的な病害
ウイルス:V ウイルス病 ダイズわい化病など(写真1、2)
細菌(通称:バクテリア):B 細菌病 タマネギ軟腐病など(写真3、4)
糸状菌(=通称:カビ) 菌類病 メロンうどんこ病など(写真5、6)

 

▲写真1 ダイズわい化病(ウイルス病:V)

 

▲写真2 コムギ縞萎縮病(ウイルス病:V)

 

▲写真3 タマネギ軟腐病(細菌病:B)

 

▲写真4 ニンジン軟腐病(細菌病:B)

 

▲写真5 メロンうどんこ病(菌類病:F)

 

▲写真6 ジャガイモ粉状そうか病(菌類病:F)

 


 

《病原体の王様》

具体例としてメロンの病気についてお話しします。表2をご覧ください。病原体の項目にVと書いてあるのはウイルス(英語名:Virus)で、Bは細菌(別名:バクテリア、英語名:Bacteria)、それからFが糸状菌(俗称:カビ、英語名Fungus)です。F、つまり糸状菌による病気が多いのが目につきます。メロンだけでなくトマト、キュウリなど野菜類のほか、水稲、畑作物でもこの傾向は同じです。つまり農作物を含むすべての植物の世界では、糸状菌が“病原体の王様”なのです。

 

▼表2 メロンの病害と病原体(代表的な病害のみ)

病名 病原体
壊疽(えそ)斑点 V
斑点細菌病 B
うどんこ病 F
炭疽(たんそ)病 F
べと病 F
黒星病 F
半身萎凋病 F
つる枯病 F
つる割病 F
ばら色かび病 F
紅色根腐病 F

 


 

■執筆者プロフィール

児玉不二雄 Fujio Kodama

農学博士。北海道大学大学院卒業後、道内各地の農業試験場で研究を続け、中央農業試験場病理科長、同病虫部長、北見農業試験場長を歴任。その後、北海道植物防疫協会にて、会長理事等を務めた。

45年以上にわたって、北海道の主要農産物における病害虫の生態解明に力を尽くし、防除に役立てている植物病理のスペシャリスト。何よりもフィールドワークを大切にし、夏から秋は精力的に畑を回る。調査研究の原動力は、“飽くなき探究心”。

 

※本コラムの内容は、2009年よりサングリン太陽園ホームページ 「太陽と水と土」に連載しているコラムを加筆・修正したものです

※写真:萩田孝志氏、谷井昭夫氏、著者