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Report.16 渡辺パイプ株式会社

遠隔制御とモニタリングで見える農業を。

収量アップに貢献し、持続可能な明るい未来の農業を創りたい

 

「スマート農業」という言葉を耳にしたとき、センサーを活用した環境制御を思い浮かべるという方も多いのではないでしょうか。法人会員・渡辺パイプ株式会社が販売する人気シリーズ「ウルトラエース」は、環境制御を行うための複合制御盤として全国各地で導入が進んでいます。今回のアグレポでは、渡辺パイプ株式会社グリーン事業部の田中様にお話を伺い、農業関係者に広く知られているウルトラエースシリーズの魅力と、そこに秘められた思いに迫りました。

 


 

渡辺パイプ株式会社

グリーン事業部 DX推進グループ

田中佑一さん

 

東京農業大学農学部農学科を2011年に卒業後、グリーン事業部熊本サービスセンターに新規配属。2017年3月まで九州で営業職としてハウスの営業に従事し、同年4月より本社営業企画部にて全国の営業企画業務を主に担当している。現在は営業企画部DX推進グループのグループリーダーを務める。

 

 


 

誰もが使いこなせる制御盤を目指して

 

ー現在全7タイプあり、農業関係者に広く知られるウルトラエースシリーズですが、どのような背景から開発が始まったのでしょうか

 

ウルトラエースが世に出る前に、同じような制御盤はすでに存在していました。しかし、当時流通していたものは高価で手が出しにくい、海外製で設定が複雑なのでなかなか使いこなせないなどの課題があったと認識しています。とくに個人農家の方にとってはハードルが高いものであったと思います。省力化にもなる環境制御システムを個人農家にもっと使ってほしい、そして誰でも使えるものであってほしいという考えから、当社では低コストとシンプルさにこだわった制御盤開発をすすめました。

 

ーそして、2016年に販売開始ですね

 

ウルトラエースは天窓、側窓、カーテン、灌水などを制御できる複合制御盤でありながら、農家さんにとって本当に必要な機能だけを実装することによってお求めやすい金額設定で販売を開始することができました。ウルトラエースは遠隔制御と遠隔モニタリングの両方を1台で実現できる画期的な製品として注目されました。これらの機能と価格帯を両立しているのは、ウルトラエースだけだったと認識しています。

 

ーいくつものセンサーと制御盤を1つに集約することで効率よく管理できると思いますが、複合制御盤であることの利点は他にもありますか

 

各設備メーカーが各々機器に合わせた専用の制御盤を出していましたが、温室メーカーの渡辺パイプが、温室を制御する機器を1つの制御盤で複合制御出来るようになりました。1つの制御盤にすることでセンサーを1つにする事ができ、センサーの違いによる測定結果の微妙なブレが生じることを防いで環境制御をすることができる点も利点です。温度センサーがバラバラだと、前後1℃くらいの差が生じることはよくありますので。あとは、暖房機が稼働したら循環扇も動くなど、機器どうしの連動性というのも最適な環境を作りだすには利点になっていると思います。物理的な面では、制御盤を設置するスペースが1箇所分で済むというのもメリットの1つかもしれません。

 

ーウルトラエースにはH、H2、K、T、Tライト、M、Cと多彩なバリエーションがありますが、1つタイプを拡張させるのではなく、複数のタイプがあるのはどのような理由からですか

 

まずは基本タイプのH型から販売をスタートしたのですが、全国各地で営農されている農家さんの栽培体系や規模、その土地の気候風土など異なる条件に対して適したものをご提供したいという思いがあって、1つの制御盤を拡張させていくのではなく、複数のラインナップをもつようにしています。電源さえとれれば導入できますので、設備などの要因ではなく、農家さんの規模や何を制御したいのかによって選択いただけるようになっています。

 

ー開発当時の「誰もが使いやすい制御盤をつくる」という思いが今も息づいていることがお話から伝わってきます。各タイプはどのような使い分けになるのでしょうか

 

換気装置、カーテン、換気扇、循環扇、暖房機などの基本的な機器を制御するのがH2です。Kというのは灌水専用モデルです。すべてを総合的に制御したい場合はTをご利用いただいています。Tにも2タイプあり、大型の施設ではTを、小規模向けにはTライトをご用意しています。最近はこのTライトが売れ筋です。
モニタリングのみをご希望の場合はMがあります。これらと同時にWEBカメラで記録を残していくのがCというのが大まかな使い分けですが、一概に“この場合はこれです”と言えないので、ご検討中の農家さんから丁寧にヒアリングを行って最適なものをご提案しています。設置の際の電気工事や初期設定も当社が承りますのでご安心ください。

 

ーそれは心強いですね。メーカー保証などもあるのでしょうか

 

1年間の保証がついています。各地に出先もありますので、何かあれば当社スタッフが対応するようにしています。また、ハウスとウルトラエースをまとめて導入していただいた方で、ハウスの3年補償に入っていただいく場合には、水没した際などにウルトラエースも含めて補償の対象となります。

 

●ハウス内に取り付けられたウルトラエースの制御盤

 


 

これからの農業の鍵を握るデータ活用

 

ー日本の食料自給率や担い手不足という状況のなかで、環境制御と同時にデータを集積して活用することによって、どのような変化がもたらされるとお考えですか

 

農林水産省の発表によると日本の農業においてデータを取得して活用しているという方は10%程度です。そのなかで、データを分析して営農に活かせている方は1%程度しかいないといわれています。ウルトラエースから取れるデータに裏付けられた環境制御を行うことができれば、より収量をあげて所得向上につながると考えていますので、食料自給率の低い日本においてデータ活用型の農業をもっと拡大したいです。また、経験や勘に頼りがちな農業が見える化されることによって、新規就農者であっても安定した品質と収量を確保できるのではないかと考えています。

 

ーウルトラエースのデータはどのようにして利用者に可視化されますか

 

ウルトラエースのセンサーで測定したデータはクラウドにアップロードされて、ウルトラネットというWEBシステム上で閲覧することができます。データの送信のためにインターネット回線の工事は必要ありません。スマートフォンなどと同じでSIMカードを装着してデータの受け渡しを行っているので、ウルトラネットを申し込まずに単体で使っている方もいらっしゃいますが、ウルトラエースの効果を最大化するには細やかな管理が不可欠です。きっちり運用していくにはデータを活用しやすいウルトラネットのセット利用をおすすめしています。モニタリング専用機のMについてはウルトラネットが必須ですのでご注意ください。

 

ーウルトラネットで確認できるデータを教えてください

 

ウルトラネットではハウス内の温度、湿度、CO 2、日射量などのデータが確認できます。リアルタイムの状況だけじゃなくて過去のデータもウルトラネットに蓄積されているので、検証や分析にデータを使うことができます。PCやスマートフォンで確認でき、遠隔でハウス内の設備を動かすこともできるので効率的ですよ。

 

ーとても便利なウルトラネットですが、難しそうと感じる方もいらっしゃると思います

 

そうですね、その点について当社としてはやはりシンプルさ今後も求めていきたいと思います。また、わかりやすくサービスを伝えていくためにスマート農業チャンネルという動画配信にも取り組んでいます。ウルトラエースを導入したら、あとは完全自動運転で放っておいても最適な環境がつくられると思われている方もなかにはいらっしゃいますので、動画のなかで時期や作物によって必要な設定方法などもお伝えしています。

 

ー確かに動画などのWEBコンテンツも充実されていますね。アグリカルチャークラブという会員サービスもあるようですが

 

アグリカルチャークラブの会員になると、専門家に営農に関する相談などを行うことができます。ウルトラエースの使い方やデータ分析についての相談も可能です。ウルトラエースユーザーは年会費もかかりませんので、ウルトラネットでデータを見ながら収量をもっとのばすには何をすべきかなど気軽にアドバイザーへ相談してほしいと思います。導入したら終わりではなく、フォローアップも拡充していくことで、小難しいイメージを払拭して多くの方にご利用いただき、収量アップを実現してほしいというのが我々の願いです。

 

 

 


 

明るい未来の農業のために

 

ーウルトラエースを活用したスマート農業の実践で、どのような農業の姿を目指したいとお考えですか

 

やはり、より省力的でより高品質なものを作るというスマート農業の根幹のところが目指すべきところではないでしょうか。灌水ひとつとっても、日々農家さんが決まった時間になったらバルブを開け締めするのではなく、必要な水分量が計算されていて、それに基づいて機器が制御されているのがスタンダードになっていってほしいですね。

 

ー今後必要性が増す技術だと思いますが、現在どのような普及活動をされていますか

 

これは一例ですが、北海道内のアスパラ栽培において、収量に差が生じている数件の農家さんを対象に、灌水のデータ取得と分析を2年間にわたって実施しています。収量の多い人と少ない人の違いを見出して、灌水を見直し、ウルトラエースKで制御していくことで安定的に高収量を目指すという実証活動です。動画配信やアグリカルチャークラブでの積極的な発信もスマート農業の普及活動です。

 

ーSAcでも注目していきます。最後に、この先の展望を教えてください

 

1年に1つ経験値が積み上がると言われる農業ですが、当社や他のユーザーの方の事例・ノウハウを共有していくことで、できるだけ早期に儲かる栽培手法を確立するお手伝いをしたいと思っています。農家さんがしっかり利益をあげていただいくことが念頭にありますので、千葉県と埼玉県にある自社農場を活用して利益が出るような手法を見つけるために日々実験的な取り組みを積極的に行っているところです。また、それに合わせてウルトラエースも進化していくことと思います。それと、自社農場では研修生を受け入れて、次世代の担い手を育成することにもチャレンジしていくプランもあります。

 

また、農業分野だけでなく会社全体での取り組みではありますが、人手不足の解消や儲かる農業のためにスタートアップの新しい発想や技術を取り入れた事業創造にも取り組んでいきます。ウルトラエースの普及と同時に、これらの活動を通じて未来の明るい農業を創っていきたいですね。

 

●自社農場で栽培されたトマトなどはオンラインストアで販売もしている

 


 

今回のアグレポで紹介したウルトラエースとウルトラネットの導入をご検討中の皆さまにとっては、料金が気になるところだと思います。ウルトラネットにつきましては、月払いや年払いなど、いくつかのプランが用意されています。また、本共同体の活動拠点である北海道の生産者には、うれしい冬季間の休止プランなどもあります。利用者のニーズにできるだけ応えるために細かな料金体系が組まれておりますので、詳細につきましては渡辺パイプのホームページからご確認いただくか、販売代理店などにご相談ください。

 

渡辺パイプ株式会社のグリーン事業部のホームページを開くと「すべては、お客様の笑顔のために。」という言葉が目に飛び込んできます。今回のインタビューを通じて、生産者目線での製品開発、アグリカルチャークラブや動画配信サービスなどの充実したアフターフォロー、全国どこからでも参加しやすいオンライン見学会など、さまざまな取り組み・コンテンツが「お客様を笑顔に」という思いでつながっているという印象をもちました。これからも渡辺パイプ株式会社の動きから目が離せません。

 

関連リンク
●ウルトラエースの詳細はこちら>>>渡辺パイプ株式会社グリーンハウス設備
●収量アップの好事例も紹介中!アグリカルチャークラブはこちら>>>アグリカルチャークラブWEBサイト