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Report.18 アグロ カネショウ株式会社

土から築き上げる生産者との絆

地域が抱える農業課題を解決し、これから先も食を支え続ける

 

2020年、創立70周年を迎えた農薬メーカーのアグロ カネショウ株式会社。青森県がルーツで、りんご栽培に使用する薬剤も多く、果樹や野菜、園芸の分野を中心に事業展開しています。主力商品である土壌消毒剤や土壌分析事業、ヘソディムの採用など土壌に関連する商品・サービスも充実しているのが特長の一つです。今回のアグレポでは、そんなアグロ カネショウの「土」を軸に、技術普及部部長の美野様に生産者への思いを伺いました。

 


 

 

アグロ カネショウ株式会社

技術普及部 部長

美野 光哉さん

1998年に入社。それ以前は環境アセスメントに従事していた経歴をもつ。“農薬を売るのではなく、農薬を使う技術を売る”がモットーの同社にあって、現在所属している技術普及部では農薬の安全使用や効能などをより効果的に伝えるための活動が主な業務になっており、日々コンテンツの作成や全国各地の支店のサポートを行っている。農家さんと近いところで仕事ができるのが、楽しさの一つ。

 

 


 

すべてを育んでくれる土との出会い

―美野さんと土との接点はいつからですか

振り返ってみると幼い頃からずっと環境とか自然などに興味をもっていました。大学へ進学してから、土壌中のセンチュウを研究テーマにして学んでいたのですが、そのあたりから本格的に土と関わっていると思います。興味がさらに深まったので、就職活動をしていた時も、大学で勉強したことを活かせる職に就きたいと考えていました。当時は色々と考えて、環境調査を行う企業への就職を選択したので、農業業界で社会人としてのキャリアをスタートさせたわけではなかったんですけどね。

 

 

―現在は農薬メーカーに勤務されていますが、大学時代の学びのなかで農薬の必要性のようなことも感じられていたのでしょうか

そうですね。それは当時も感じていました。大学時代に、えん麦を用いてネグサレセンチュウを耕種的に防除する実験をした際に、大根を栽培する圃場のセンチュウ自体はおさえることが出来たのですが、キスジノミハムシが大量に発生していたために、大根に食害痕がついて満足に出荷できずに終わってしまいました。あのときは、センチュウによる被害だけをおさえてもダメで、商品価値を下げてしまう要因を適正な農薬によって防除しなければいけないと実感しました。縁があって今の会社を紹介していただいた時には、農薬の業界で農薬について正しく学ぶことも必要なことなのではないかと思いましたね。

 

 

―美野さんと農薬がそのように結びついたのですね。アグロ カネショウには美野さんが学生時代に関心を寄せた土に関する薬剤も多いと思います。美野さんにとって土とはどんなものか教えてください

農業は土作りから始まりますし、土壌が作物を育んでくれる源であると考えています。ですので、土壌から生産者と関わることが大切であると感じています。弊社の創業者は、弘前でのりんご栽培を通じて、先進国の果樹栽培を学ぶ中で、増産するためには品質に優れた農薬が必要と考え、輸入することをはじめました。それが、弊社の成り立ちです。そこから、生産現場が抱える課題や要望に応えるために、より良い農薬を追い求めて自社でも創製をはじめ、かつ使用技術を拡める活動も開始しました。弊社の主力商品のひとつ「バスアミド」も、生産者にとって処理時の刺激臭が少なく、また安全性が高い土壌消毒剤を開発するという思いから試験を重ねて上市に至っております。

 

 

―やはり生産者の土への関心度は高いですか

そうですね、高いと感じています。目で見てもなかなかわからない土の状態を知りたいと思っている生産者の方は多いですよ。土が肥沃じゃないと作物はうまく育ちませんが、日本は土地によって土壌が全然違います。その土地の土壌を知り、風土に適した土作りを行う奥深さは、個人的にも魅力を感じています。

 

 

土壌分析は生産者との信頼構築につながる貴重なツール

―土の状態を知りたいと願う生産者が多いなか、2013年に土壌分析の事業を立ち上げていますね。どのような背景があったのでしょうか

当時は、「バスアミド」「D-D」「ネマキック」といった土壌消毒剤の主力商品が揃ってきていた頃です。ただ、これらを使えば全てがうまくいくわけではなくて、失敗もたくさん経験しています。特に私が衝撃を受けたのは愛知県での事例です。ある日、生産者の圃場を訪ねてみると収穫直前の白菜が全面枯れてしまっていたのです。その地域では根こぶ病対策でバスアミドを使っていただいていたのですが、原因について調査した結果、バーティシリウムによる黄化病が原因だったとの判断に至りました。根こぶ病と黄化病では、原因となる菌の土壌中での生息域に違いがあります。バスアミドで防除しても、深いところにいるバーティシリウム菌は防除しきれていなかったために発生したものと考えました。こういう事例は全国各地で時折発生していたので、防除対象が把握できていれば適切な使用方法を指導でき、病害の発生を防げるのではないかと考えておりました。また、土壌の化学性や物理性による作物の生育不良も確認されていたため、土壌診断を行って根拠に基づいた情報提供を行うことが生産者の課題解決に少しでもつながるのではと感じていました。そうして、土壌分析を行える設備を2013年末に整え、2015年から本格的に事業としてスタートさせています。

 

●発病時の様子

●翌年の様子

 

 

―アグロ カネショウの土壌分析の特長を教えてください

生物性分析と化学性分析のどちらも行っていることですね。特に、生物性分析を実施しているところは少ないと思います。先ほどもお話したように、土壌中の病害がわかっても、実は化学性のバランスの問題で生育不良が起こっていることもありますので、生物性分析だけじゃなく、化学性分析や土壌の物理性の分析も行い、様々な面から検討して生産者に診断結果を提案していければと考えております。

 

 

―そこまで細かく分析が出来ても、生育不良の要因を特定するのは大変そうですね

そうですね。「前作で生育が悪かったから診て」という依頼だと正直結構難しいです。疑わしい病害の予想がついていれば、それを引き起こす菌を分析して診断結果を出すことができるのですが、全ての可能性を検討しなくてはいけないような状況だと菌がいるかいないかの判断だけになりかねません。そこで、作物によってはヘソディムのマニュアルを参考にして、土壌分析の結果に対してどのようなリスクがあって、そのリスクを低減するために望ましい対策は何なのかを報告することもあります。SAcの顧問でもある東京農業大学の對馬教授との出会いで、当社の土壌分析事業に厚みをもたせることができました。とても貴重なつながりになっています。

 

 

―ヘソディムについてはどのようにお知りになったのでしょうか

病害の診断を含めて土壌分析をやっていくのであれば、ヘソディムのことを勉強しておいたほうがいいと色々な方からアドバイスをいただいて、当時、つくばの環境インベントリーセンターを訪問したのが對馬先生との最初の出会いでした。2014年に岩手県で開催された談話会の中で、ヘソディムマニュアルを作成した県指導機関の方が、マニュアルができても生物性分析を受託してくれる先が無いことに困っているとの話がありました。ちょうどその分析方法は弊社が取り入れた内容と同じであったため、弊社でヘソディムの考えを取り入れた土壌診断を実施する大きなターニングポイントとなりました。

 

 

―ヘソディムという土の“健康診断”を行って、予防をしていくことによって、農薬の使用量にも変化があらわれるのではないかと思うのですが、そのあたりはどのように捉えているのですか

確かに、ヘソディムの考えを活用すれば、農薬の使用量を減らすことにつながる可能性はあります。この部分だけを切り取って見てしまうと、農薬メーカーに勤務しているものとして複雑な思いもしますが、本来、農薬は必要なところに使用すれば良いと考えます。特に土壌消毒剤の場合は、必要でない場面までコストをかけて使用することは無いのではと感じます。生産者と接する際には、農薬を使用してもらいたいという気持ちが無いわけではありませんが、土壌診断の結果次第では包み隠さずこのような話をし、生産者とともに考えていく事が重要なのではないかと考えます。このように、生産者と真摯に向き合うことで、信頼構築につながり、全体を俯瞰すれば、生産者にも弊社にとっても良いことだと考えます。

 

 

 

点でおわらせないための“カネショウファーム”

―土を起点にして生産者と強固な関係を築かれていますが、他にも生産者の課題解決のために取り組んでいることはありますか

個人の生産者だけでなく地域の農業課題を解決するために現在取り組んでいるのが“カネショウファーム”です。自社農場ということではなくて、各地で課題を抱えている生産者の方の圃場をそのように名付けています。当社だけでなく、指導機関や流通業者様などにも関わっていただいて、生産者とともに取り組んでいます。1対1の展示圃のようなイメージとは異なり、カネショウファームで得られたデータを元に、その地域で問題となっている病害に対する防除基準を資料化することなどを目指しています。土壌分析の結果も積極的に取り入れることで、数値として表すことができれば、生産者に対してもより説得力が増します。

 

 

―素晴らしい取組ですね。全国で何箇所くらいありますか

現在、全国で6箇所設置しています。九州では3年前よりカンショ基腐病が発生して、焼酎の原料であるコガネセンガンが十分にとれないという事態がおきていました。生産者とともに地域の産業を守ろう、と始動して今年で3年目になりますが、苗床から病害の防除をしっかり行っていく事で、一定の成果が出てきています。このような取り組みを行ってきて、各地各地で課題に対するマニュアルや基準のようなものが少しずつ出来てきました。これをうまく地域の産業振興に役立ていきたいというのが 私たちの願いです。

 

●カネショウファーム南九州

 

―うちの課題も聞いてほしい、という生産者の方は多いのではないかと思います

当社で取り組めるような内容であれば、是非課題解決にむけて一緒に取り組んでいきたいですね。北海道の場合は輪作体系がしっかりしているので土壌消毒はあまり行われていないのですが、温暖化もあって、土壌の凍結具合も年々変化してきていると思います。今までなかったような病害が出てくるかもしれないですし、何か課題があれば現場に伺って、そこで何が起きているのか、何が原因なのかを一緒に考えるところから取り組んでいきたいと考えます。

 

 

―まずは相談していただきたいですね。既に様々なソリューションをお持ちですが、この先はどのように農業と関わっていきたいとお考えですか

農業は食の供給を行っている非常に重要な産業です。就農者は減少しておりますが、大規模経営も増え、省力化につながるような技術は目覚ましく進歩しております。新しい技術が確立されていく中で、農薬にとどまらずいろいろな技術サポートをできる存在で有り続けたいと考えています。

 

 


 

最近はアグロ カネショウ株式会社の社内で、美野さんが管理されている土壌分析の取り組みを通じて農家さんとの接点が増えたことを実感する話が出ることも少なくなく、嬉しさを感じているのだそうです。毎年継続して土壌分析の依頼をされる生産者も増えてきているようで、社内外からアグロ カネショウの土壌分析は高い評価をうけています。例年通り作付しているのに収量が落ちてきた方や、圃場内で何か変化が起きた時には、原因特定と解決にともに取り組んでくださるアグロ カネショウ株式会社の土壌分析を検討されてみてはいかがでしょうか。