Report.22 黒瀬農園
夏場は丘の頂上に花開くラベンダーが目印
直売所も運営する砂川市の黒瀬農園
緑と水辺がひろがる自然美あふれるまち、北海道砂川市。砂川市街から車で10分ほどの場所には、野菜の直売所やラベンダー園を運営する黒瀬農園があります。代表の黒瀬修さんとご子息の大地さんに、農園の特色について伺いました。
黒瀬農園では、6.3haほどの農地に9棟のビニールハウスを建て、少量多品目生産を行っています。主な作付品目であるミニトマトやかぼちゃのほか、葉物野菜や根菜、果樹などを広く栽培しており、品種数はなんと70以上。収穫物は砂川ハイウェイオアシス館内の産直市場に年間を通して出荷しているほか、7月から雪が降るまでは農園内の直売所でも販売をおこなっています。
就農してから40年を超える修さんのモットーは、農業を楽しむこと。なかでも珍しい品種や新しい品種の試作が、大きな楽しみになっています。「気になる品種を見つけたら、まずは畑で育ててみる。自分で『美味しい』と感じた作物だけを、直売所で販売するようにしています」と、修さんは笑顔を見せます。日々の作業の励みとなるのは、お客さまからの声。直売所に足を運んだお客さまからは「いろいろな作物が購入できて楽しい」と、喜びの声が寄せられます。長年、さまざまな作物を栽培・販売してきた黒瀬農園には、新しい野菜との出会いを心待ちにするリピーターも少なくありません。
● 砂川ハイウェイオアシス館の産直市場の様子。特にかぼちゃやとうもろこしが人気だという。
地元・砂川市の夏の風物詩が、黒瀬農園の丘に植えられたラベンダーです。
修さんが鑑賞目的で始めたラベンダー栽培が口コミで話題となり、長年「黒瀬ラベンダー園」として親しまれています。植えられているのは「おかむらさき」という遅咲きの品種。香り高く、淡い紫色が特長です。ラベンダーの見頃は例年7月上旬からの約1ヶ月間。ラベンダーが咲く丘の頂上からは、樺戸山地のピンネシリ山(標高1,100m)を望むことができ、眺望の良さも人気を集めています。
● 見頃を迎えたラベンダー園。新型コロナウイルスの流行前は、外国人観光客もよく足を運んだという。
ラベンダー園の客足が増える一方で、黒瀬農園ではラベンダーの手入れと農作物の生産との両立に頭を悩ませていました。長年ラベンダーの管理は修さんが1人でおこなっていたため、除草や花株の更新が追いつかなくなってしまったのです。そこで、やむを得ずラベンダー園の規模を縮小して運営を維持してきました。そんな黒瀬農園に手を差し伸べたのは、「以前のようなラベンダー園を復活させたい」という思いを持った地域住民の皆さんでした。2017年からは、砂川市や観光協会の協力のもと「ラベンダー園再生ボランティア」を募り、地域一体でラベンダーの苗植えや除草作業をおこなっています。
● ラベンダー園再生ボランティアの様子。現在2023年度の参加者を募っている。
黒瀬農園の未来を担う若き力
修さんの力強いサポーターとして農園を支えているのが、ご子息の大地さんです。大学院では作物学を専攻し、ダイズの多収栽培技術の研究に取り組んでいるほか、地域の子どもたちに農業の魅力や面白さを伝える教育方法についても日々模索しています。ご自身の将来について「まずは大学院で農業にしっかりと向き合いたい。修了後は、農業教育に関連する企業などで数年間経験を積み、将来的に親元で就農できれば」と語る姿は、とても希望に満ちたように見えました。研究活動の合間を縫って実家に足を運び、農業に精を出す大地さんには、将来の就農を見据えて挑戦してみたいことがあります。それは、気象センサーの導入とデータの蓄積です。「気温などのデータを収集しておくことができれば、研究テーマのダイズ栽培だけでなく自分が就農する際にも役立つかなと。父が長年の経験から培った『農家のカン』が足りないので、経験が浅い部分をデータや科学的視点で補完し、より消費者に喜んでもらえる野菜を生産したい」と意気込んでいました。
● 黒瀬 大地さん。農園では、大地さんが本州で購入してきた品種も栽培されている。現在はダイズの千鳥播(Twin row)栽培に着目し、多収を目指した栽培技術の研究に興味を持っている。
読者の皆様も、お近くにお越しの際は黒瀬農園を訪れてみてください。
【アクセス】※掲載情報は取材時のものです
〒073-0107 北海道砂川市一の沢62(砂川ハイウェイオアシスより車で7分)
園内の直売所の営業期間:7月上旬~雪が降るまで ※砂川ハイウェイオアシス館には年中出荷
入場無料。無料駐車場、トイレ完備。
【2023年度ラベンダー園再生ボランティア 詳細】
日時:2023年6月10日(土)、6月24日(土)、8月26日(土) 10時~12時
※ 雨天の場合、翌週土曜日に延期
持ち物:軍手、帽子、タオル、飲み物
問い合わせ先:砂川ラベンダー保存会 kurose.lavender@gmail.com