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Report.21 テラスマイル株式会社

正しい情報をもとに農業経営を評価する世界へ

テラスマイルが提案するスマート農業

 

テラスマイル株式会社
代表取締役 生駒 祐さん

東京都出身。大学卒業後に入社したIT企業にて、ソリューションセールスを担当。

2010年にMBA(経営学修士)取得後、2011年より3年間宮崎県の農地所有適格法人の運営に携わり、独立。2014年、宮崎県でテラスマイル株式会社を設立。

 


 

農業×ITの世界で、生駒さんが起業に至るまで

 

 

生駒さんが農業と出会ったのは2010年頃のこと。大学卒業後に入社したIT企業の事業のなかで、宮崎県の農地所有適格法人を再生させるプロジェクトのマネージャーに抜擢されたことがきっかけでした。生駒さんは「ゆくゆくは経営に携わりたいという思いがあったので、MBAを取得していました。それまで農業との関わりは全くありませんでしたが、大学院での学びを活かせる機会だと捉え、前向きな気持ちで宮崎へ向かいました」と、当時を振り返ります。

 

生駒さんが運営に関わった法人では、約40名を雇用し、3haの圃場で年間200トンほどのミニトマトを生産していました。しかし経営は思わしくなく、年間数千万円の赤字を計上している状態。「農園運営の達人になる」というビジョンを掲げた生駒さんは、自身のバックグラウンドであるITや経営学を駆使した農業で、法人の再建を目指します。

 

はじめに着手したことは、「課題が何かわからない」状況を打破することでした。

生駒さんは当時、周囲の農業者から聞かれる「農業はお天道様次第だから」という声に衝撃を受けたといいます。「農作物がうまく作れないという事象の裏側には、土壌や品種、植えた時期や天候などあらゆる要因が絡み合って存在しているはずですが、その要因を詳しく探ろうとしていなかった」と、自然相手の農業において要因分析を諦めてしまいがちな現場の課題を目の当たりにしました。そこで生駒さんは、農園の再建に必要な策を導き出すため、生産現場から流通に至るまでに得られるあらゆる情報の整理を始めます。さまざまな情報を集めるなかで、たどり着いたひとつの答えが「予測」でした。市況データなども活用し、高値で取引される時期などを予測することができれば、利益が上がると考えたのです。取引先に対して「来週はミニトマトが何kgほど出ます」という週間予測を、レポートとして提出するようにした結果、以前は20~30%だった契約取引率が120%まで上昇。契約依頼が増加し、データの活用を始めてから2作で黒字化に成功します。

 

これらの一連の経験を経て、生駒さんは「データが見えると変わる世界がある」と確信。データ活用を通じて、農業者が抱えている経営課題を解決するソリューションを提供しようと、2014年にテラスマイル株式会社を創業しました。

 

 

テラスマイルが開発する経営管理クラウドサービス「RightARM」とは

 

 

テラスマイル株式会社では、農業をとりまく生産・販売に関するデータを一元化・分析し、農業の「見える化」を実現するRightARM(ライトアーム)を2019年より展開しています。ライトアームは、その名の通り農業経営者の「右腕」として経営判断をサポートするシステムで、既に12の県で導入実績があります。施設園芸や露地野菜などにおける32品目の経営分析が可能で、農林水産省から「農業経営支援サービス」に採択されるなど注目が高まっています。

 

生駒さんは、ライトアームの強みを、①傾向予測、②コンバーター(翻訳)機能、③分析に基づくアウトプット、の3点にあると捉えています。

ライトアームでは、出荷量ではなく「収穫量の波」を予測するため、市場で欠品しそうな時期を早めに把握することができます。農業者がその時期を狙って出荷量を調整することによって、売上の向上が見込めるという仕組みです。また昨今のスマート農業の普及に伴い、圃場で活用されるセンサーや農機などの機器が増加する一方で、各社のフォーマットが異なるために情報を比較しづらいという課題があります。そんな場面でライトアームを活用すると、異なるメーカーのデータを翻訳し、点在している情報を集約することができます。そして、その集約したデータに基づいた経営指標をデジタルで提供し、総合的な経営分析を可能にすること。これが、ライトアームの強みです。

 

テラスマイル株式会社が大切にしているのは、農業者1人ひとりが抱える課題、価値観、経験・体験までを自分ごとと捉え、農業者や産地形成者の成功まで伴走することです。テラスマイル株式会社では、ライトアームの導入先である自治体やJAのみならず、その先にいる農業者ともつながりながら、生産現場とともに産地づくりを支援しています。そこには、農業者が抱える課題を一緒に解決していくことで、日本の農業の生産性を高めてゆきたいという生駒さんの思いがあります。この力強いサポート体制も、農業情報学会から「圧倒的な『現場力』を持つ会社」と高く評価される理由のひとつです。

 

 

ライトアームで目指す、持続可能な日本の農業

 

 

テラスマイル株式会社では、正しい情報をもとに農業経営を評価できる世界を作るため、目下の目標に「全国の農業経営のマニュアル(農業経営指標)をデジタルにする」ことを掲げています。2023年には北海道内での実証活動も決定しているといい、生駒さんは「本拠地の九州をはじめ、本州のさまざまな産地で培った知見をもとに、日本の食料基地・北海道でもより良いサービスを提供したい」と、道内でのサービス展開に意気込みを見せます。

 

農家のカンと経験が重要といわれた従来の農業から、客観的なデータに基づいた生産性の高い農業への転換をサポートする、テラスマイル株式会社。将来的には、ライトアームで各産地のCO2排出量を自動的に把握できるようにし、環境経営にも適応したデータベースにする構想があります。「脱炭素化が重要視される今、排出量取引に前向きな小売業との橋渡しに、ライトアームを役立てたい」と、時流を捉えたシステム構築を目指す生駒さん。日本の農業の持続可能性を高めるため、生駒さんとテラスマイル株式会社の挑戦は続きます。

 


 

【関連リンク】
テラスマイル株式会社
RightARM