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Report.12 株式会社 十勝美濃農場

生まれ育ったまちで食味にこだわった野菜を生産。

祖父と父から受け継いだ農業の道を頼れるスタッフと共に歩み続ける。

 


 

株式会社 十勝美濃農場
代表取締役社長
美濃志拓さん

 

SNSを通じ、生長していく野菜の写真や収穫作業の動画を発信している志拓さん。農場経営を務める一方で、地域を活気づける「十勝いけだ屋」という団体の一員として活動しています。

 

 


 

 

畑作4品からタマネギへ
雇用を生んだ畑の拡大

 

十勝平野のやや東に位置する池田町は、日本初の自治体経営ワイナリーが誕生したまち。醸造所である池田町ブドウ・ブドウ酒研究所は「ワイン城」の愛称で親しまれ、観光地として知られています。取材にお伺いした2020年10月中旬は、ワインの原料となるブドウ「山幸」の収穫期。秋晴れの空の下、十勝美濃農場でもスタッフが収穫作業にあたっていました。「うちのブドウはこの後ワイン城へ運ばれ、醸造されます。今年は収穫量が多く糖度も期待できそうです」と、美濃志拓さんは畑を眺めながら笑顔で語ります。


志拓さんは十勝美濃農場の2代目です。祖父の代から続く農業を父親の広由さんが受け継ぎ2008年に法人化。2016年には志拓さんが代表となり、農場を切り盛りしています。「小さな頃から、いずれは自分が後を継ぐのだろうと思っていました。網走にある東京農業大学で経営について学び、卒業後は地元に戻ってすぐに就農しました」


十勝美濃農場の主力作物はタマネギです。作付面積が約34ヘクタールと、大規模農家の多い十勝でもトップクラスです。かつては小麦、ばれいしょ、豆類、ビートと畑作4品の輪作が主でしたが、広由さんの代のとき、植え付けから収穫までの作業を機械化できるタマネギの栽培に着手。思いの外、売上高が良かったため畑作4品を減らしてタマネギにシフトし、畑を拡大していきました。人手が必要となった農場は、繁忙期と閑散期のムラをなくすためタマネギの種類を4つに増やし収穫期を分散。さらにブドウやトウモロコシ、カボチャ、小豆など多品種を栽培し、年間を通して働ける環境を整え、安定的な雇用を実現しました。

 

 

●畑のそばに積み上げられたタマネギのコンテナ。今年は天候に左右され、思うように収穫作業が進みませんでしたが、2020年10月1日に無事終わりました。

 


 

コロナ禍で気づいた
「地元」という新しい路

 

2020年は新型コロナウイルス感染症の流行で農業分野にも深刻な影響が及び、入国制限による特定技能外国人の労働力減少や、飲食店の営業自粛による販路縮小など未だ厳しい状況が続いています。道外出身のスタッフも多い十勝美濃農場では、全員に抗体検査を受けさせ感染対策を徹底。人手はなんとか足りたものの、大手牛丼チェーン店に卸しているタマネギや土産菓子に使われる小豆の需要は減少してしまいました。そのような中、志拓さんはスタッフの提案で新たな試みを実施しました。

 

「8月の終わりにトウモロコシとトマトの直販を町内で行ってみたんです。急なことだったため、告知は前日のツイッターとインスタグラムへの投稿のみでしたが、おかげさまで完売。『トウモロコシが甘くておいしいかった』と、1日のうちに2度来られた方もいたほどです。こうした経験は農場としては初めてで、スタッフは消費者と直接コミュニケーションがとれて元気をもらえましたし、私にとっては販路の多様さやその特性を身をもって感じる機会になりました」

 

 

●十勝美濃農場の総作付面積は約56ヘクタール。ブドウ畑はそのうちの1.8ヘクタールほどです。「今年の収量だとワインボトル1万本分くらいかな」と志拓さんは笑顔で話します。

 

 

●十勝ワインの原料となるブドウは、種類によって受け入れ期間が決められています。2020年の「山幸」は10月7日から受け入れをスタート。今年は豊作のようです。

 


 

スタッフがやりたいことを
今以上に後押しできる会社へ

 

十勝美濃農場では、作物ごとに栽培担当を決めています。それはスタッフの責任感を養い、作業効率を高めるためです。カボチャの栽培ではスタッフの提案で地植えから移植栽培に切り替えたところ、収穫量が大幅に増えたそう。また今年は、やはりスタッフの提案でうどんこ病を防ぐために無人ヘリコプターでの農薬散布を行い、防除作業を効率化させました。成果が出るとスタッフのモチベーションは上がります。さらに売り上げが良ければ給与アップというかたちでの還元も見込めます。

 

「がんばってくれるスタッフのために今よりもっと働きやすい農場にしたい」と志拓さん。そのためにまずは栽培品種の見直しをしていきたいと考えています。「作物の種類が多いほど管理が繁雑になり、効率もどうしても下がってしまいます。スタッフの負荷を考え、栽培品種を抑えて心も体も楽に働ける環境づくりを目指したいと思っていたところです。品種を厳選することで使う機械が限られ、コストカットにもつながるのではないかと考えています。ただ、品種選びにはこだわり続けます。私たちがこれまで生産してきたのは『自分たちが食べておいしいと思える野菜』。いち消費者の気持ちを忘れず、多くの人が喜んで購入し、食べてくれる野菜を今後も作っていきたいです」

 

 

●一心にブドウを収穫していたスタッフの皆さん。畑からは時折楽しげな声が聞こえてきました。現在、社員3名、パート・アルバイト6名が働いています。

 


 

サングリン太陽園技術情報誌「太陽と水と土」97号「北の農業人」より転載