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Report.1 株式会社JAKE(ジェイク)

農業で地域を元気にしたい、という熱い思いが原動力に。
規模拡大と多角経営に取り組み
農業の新しいビジネスモデルを描く。


 

株式会社JAKE(ジェイク)
代表取締役会長
西村公一さん

2010年に農業散布事業を行う空知RCヘリを設立。2017年に空知RCヘリと生産部門を統合して株式会社JAKEに社名を変更し、多角経営に取り組んでいます。


 

自立した農業をめざし
花き栽培で規模拡大を図る

岩見沢市は北海道屈指の花き産出額を誇り、花き栽培が重要な基幹産業となっています。生産された花の大半が全国に向けて出荷され、特に夏場の主産地として高い評価を受けています。
株式会社ジェイクは、花きやミニトマトの栽培と無人ヘリコプターによる農薬散布事業を中心に、花店やJR岩見沢駅での飲食店の運営など多角的な事業を展開。従来の農業の枠にとらわれないユニークな取り組みが注目を集めています。
代表取締役会長の西村公一さんは、20代で父親から農業を継承。無人ヘリコプターで農薬散布を請け負う事業を立ち上げ、稲作から花き栽培へと転換しました。「家業を継ぐときに考えたのが、農業だけで食べていけるようになろう、ということでした。そこで規模の拡大をめざしましたが、耕地面積は簡単には増やせないため、少ない土地でも効率的に生産できる花き栽培に取り組むことにしました」
農業への情熱とチャレンジ精神で新たな事業を始めた西村さんでしたが、当時は不安ばかりだったといいます。ビニールハウスなどへの設備投資も必要だったため、農薬散布事業が軌道に乗ると、収益はすべて農業の規模拡大に注ぎ込んでいきました。そうしたサイクルがうまく機能し、7年ほどでビニールハウスを40棟まで増やすことができたそうです。
現在、栽培している品種はスターチスとアルストロメリア。当初は複数の品種を手がけていましたが、安定的に生産できる2種に絞っていきました。

●無人ヘリコプターやドローンを使った農薬散布事業は、道内を中心に遠くは九州からの依頼も受けています。それがさまざまな地域の情報を見聞きする機会にもなっている、と西村さんは話します。


 

試行錯誤と挑戦を繰り返し
持続可能な農業を実現する

同社では昨年から農薬や化学肥料を使わないミニトマトの栽培に取り組んでいます。専用のビニールハウス3棟に温度や湿度の管理、有機肥料の供給や給水などを自動で制御するシステムを導入。ポットを使った栽培で作業の省力化と効率化を図りながら、付加価値の高いミニトマトづくりに挑戦しています。そこには農業の未来に対する危機感があったと、西村さんはいいます。
「従来の農業を続けていくだけではいずれ限界が来る、と感じていました。ポット栽培であれば導入しやすく、ミニトマトの市場ニーズも多い。将来的には、有機栽培の野菜は高い、収量も少ない、という常識を覆したいと考えています」
今年はさらにビニールハウスを 3棟増設し、生産体制を強化。秋にはグローバルGAPの認証も取得する予定です。
また、今春からは岩見沢市観光協会と連携し、エディブルフラワーによる地域活性化プロジェクトにも乗り出しました。食用花のビオラやキンギョソウを生産し、市内の洋菓子店やホテルで使ってもらうほか、岩見沢駅の店舗やイベントなどでの販売も計画しています。「流通に有利なドライ加工に対応するため、加工室も新設しました。エディブルフラワーを活用することで、“花のまち”という岩見沢市のイメージをもっとアピールできれば」と構想を語ります。

●ミニトマトの主力品種は、糖度が高く、食味の良さが人気のシンディースイート。2020年の東京オリンピックを見据えて、販路拡大も図っていく予定です。

●甘い花の香りが漂うビニールハウス。花は市場の人気に価格が左右されることが多く、多様なニーズに応えるために色のバラエティーを取り揃えるようにしています。


 

新たなビジネスモデルを築き
理想の農業を追求したい
継続的な新規事業の展開を可能にしているのが、独自の経営方式です。現場の作業は社長をはじめとするスタッフに任せることで、西村さんはマネジメントやコンサルタント業務に専念。他業種とのネットワークづくりや情報収集を精力的に行い、未来につながる農業のビジネスモデルを構築しようとしています。
「農業を継ぐ前は、まったく業種の違う仕事も経験しました。会社をつくってからもいろいろ失敗をしましたし、苦労もありました。だからこそ多様な視点で農業を見ることができるのだと思います」
今後はこれまで培ったノウハウを生かし、農業アドバイザーとしての活動も増やしていきたいと話す西村さん。海外でのビジネス展開も視野に、新たな農業の可能性を模索しています。
「これから先、日本の農業は衰退するかもしれない。その中にあっても、農業や地域を引っ張っていける存在になりたい。農が生活を支える“業(ぎょう)”として成り立っていくように、これからも理想を追求していきたいですね」

 

●次代に引き継ぐことができる農業のビジネスモデルを構築したい、と熱く語る西村さん。「農業はサービス業だと考えています。農業が続いていくには、そういう意識に変わっていく必要があると思います」

 

●岩見沢の中心部にある直営のフラワーショップ「JAKE FLOWER」。消費者や市場のニーズをキャッチするアンテナショップ的な役割も果たしています。


※サングリン太陽園技術情報誌「太陽と水と土」92号「北の農業人」より転載